研究実績の概要 |
本採択課題では、水晶体に特異的に発現している水チャネルであるアクアポリン0 (AQP0)に着目し、AQP0の持つ物質透過と細胞接着機構の調節機構の解明を試みて研究を行ってきた。 AQP0の物質透過性は、アフリカツメカエルとL-cellを用いて検討した。その結果、ルシファーイエロー(カチオン性低分子)、DAPI(アニオン性低分子)ともに透過しないことが明らかとなり、その他の低分子化合物も検討したがいずれもAQP0チャネルポアを透過しなかった。 次に、AQP0の機能を制御する新規候補タンパク質の検討を行った。その結果、水晶体に発現している中間径フィラメントであるフィレンシンが直接の相互作用を介してAQP0の物質透過能を負に制御することが明らかとなった。 さらに、細胞接着能について検討した。古くよりAQP0は、物質透過能と細胞間接着能の二つの機能を持つことが推察されていたが、直接的なデータはいまだ報告されていなかった。そこで本採択課題では、AQP0の各細胞外ループ領域(A-loop, C-loop, E-loop領域)をグルタチオンSトランスフェラーゼ (GST) に融合させた発現ベクターを作成し、GST pulldown法により結合部位を同定した。その結果、AQP0はC-loopを介して互いに結合することが明らかとなった。さらにAQP0の細胞接着能をL細胞を用いて検討した。その結果、AQP1およびベクターコントロールに比べ、AQP0発現L細胞で有意な細胞接着が認められた。さらにC-loopの中で細胞接着に関与するアミノ酸の同定を目指し、いくつかの変異を導入したAQP0を用いて検討した。その結果、C-loopのV109, V110が深く関与していることが示唆された。一方でこの領域に変異を入れても水透過能に影響を与えないことが明らかとなった
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