研究実績の概要 |
本研究では、飛躍的に適応が拡大しているメトロニダゾール (MTZ) の関与する既報の薬物相互作用メカニズムの解明に加え、MTZがその他の薬物と相互作用を起こす可能性の検討を目的とする。 平成29年度においては、主要な薬物代謝酵素の活性に及ぼすMTZの影響について、ヒト肝ミクロソームを用いたin vitro試験により検討した。パクリタキセル6α-水酸化活性 (CYP2C8)、S-ワルファリン7-水酸化活性 (CYP2C9) およびトリアゾラムα-水酸化活性 (CYP3A4) に対して臨床濃度付近のMTZは全く影響を及ぼさなかった。また、4-メチルウンベリフェロングルクロン酸抱合活性 (UGT) に対してもMTZの影響は弱く、MTZ濃度依存的な阻害は認められなかった。次いで、臨床において認められたMTZ併用による血中5-fluorouracil (5-FU) 濃度上昇について検討することを目的として、SDラットを用いて5-FUの体内動態に及ぼすMTZの影響を検討したところ、臨床と同様の相互作用は認められなかった。さらに、5-FUの主代謝酵素DPDの発現に及ぼす影響についてヒト肝腫瘍由来細胞株HepG2を用いて検討を行ったところ、MTZの有意な影響は認められなかった。 本研究の結果および我々の既報 (Xenobiotica., 45, 413-419. (2015)) に基づくと、MTZの併用による血中S-ワルファリン濃度の上昇は、酵素のタンパク質レベルおよび活性レベルでの確認が必要ではあるが、CYP2C9の発現減少による可能性が考えられる。今後、MTZ代謝物の影響などについても検討を行うことで、その他の相互作用メカニズムの解明および臨床においてMTZを安全に使用することに繋がると考えられる。
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