研究課題
5-FU関連抗癌剤投与により副作用を呈した症例の尿と血液を用いてピリミジン代謝異常症を診断した。UPLC-MS/MSを用いて、診断に必要な6種類のピリミジン代謝物質のスタンダートキャリブレーションカーブを作成し、各代謝物を定量し、その分析パターンからピリミジン分解経路のどの酵素が欠損しているか同定した。具体的にはウラシル、チミンの上昇とジハイドロウラシル、ジハイドロチミンの低下を認めた場合にジハイドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)欠損症と診断、ウラシル、チミンの軽度の上昇とジハイドロウラシル、ジハイドロチミンの著明な上昇、N-カルバミルβ-アラニンとN-カルバミルβ-アミノ酪酸の低下を認めた場合は、ジハイドロピリミジナーゼ(DHP)欠損症と診断、N-カルバミルβ-アラニンとN-カルバミルβ-アミノ酪酸の著明な上昇と軽度のジハイドロウラシル、ジハイドロチミンの上昇を認めた場合にはβ-ウレイドプロピオナーゼ(βUP)欠損症と診断した。DPDは末梢単核球に発現しているため、末梢血を用いた酵素活性測定について基質の量や反応時間などを繰り返し検討し、DPD活性測定系を確立した。5-FU関連抗癌剤の副作用症例において、尿中ピリミジン分析では異常を指摘できなかった症例で、末梢単核球中のDPD活性の測定を行い、その結果、DPDがコントロールの20%未満の活性を示すDPD部分欠損症を診断した。このように尿中ピリミジン分析と末梢血単核球中DPD活性測定を組み合わせることにより、DHP完全欠損症、βUP完全欠損症、DPD完全欠損症および部分欠損症のすべての診断をすることが可能となった。また、これらの診断に要した時間は、尿中ピリミジン分析は3日以内、酵素活性測定検査は1週間~10日で結果報告が可能であったため、副作用例のみならず投与開始前スクリーニング検査として発展する可能性が示唆された。
すべて 2017
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Molecular genetics and metabolism
巻: 122 ページ: 216-222