研究課題/領域番号 |
16K18962
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
水野 智博 名城大学, 薬学部, 助教 (40711669)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 補体第5成分 / 播種性血管内凝固症候群 |
研究実績の概要 |
播種性血管内凝固症候群(DIC)は、敗血症、悪性腫瘍等の基礎疾患存在下にて発症する致死性症候群である。凝固系の亢進に伴い、血栓形成が促され、多臓器障害を引き起こす。また、凝固因子の枯渇による相対的な線溶系亢進を呈する。DICの治療は、基礎疾患をコントロールすることが最優先されるが、悪性腫瘍のように、基礎疾患が難治性の場合、予後不良である。我々は新規治療薬の開発を目指し、凝固系とクロストークする補体経路に着目した。凝固-補体系クロストークに関与する物質として補体第5成分 (C5) が報告されている。そこで我々は、C5がDICの病態に関与していると仮定し、C5欠損マウスを用い、ヒストン投与によるDICモデルの作製を試みた。C5欠損マウスでは、正常マウスと比較してヒストンに対する抵抗性が高く、死亡率、血球障害および肝障害も軽度であった。また、肝障害の要因として、血小板凝集による肝血流低下が示唆された。そこで、本機を用いて血小板-白血球複合体(PLAs)を解析したところ、C5欠損マウスではPLAsの形成が少なく、PLAsの形成に関与するCD11b陽性細胞の割合も少なかった。ヒストンを投与した正常マウスではC5a濃度の上昇が認められたため、C5a受容体アンタゴニストを用いて治療実験を行ったところ、肝障害の軽減、PLAs形成阻害が認められ、抗C5a薬の有用性が示された。以上の結果より、C5およびC5aはヒストンにより惹起される致死性血栓症の治療ターゲット分子になりうることが示された。尚、本成果はScientific reportsに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度の実施計画および平成230年度実施計画の一部まで完了しており、その成果は学術誌にも掲載されている(Sci Rep, 2017)。論文掲載まで進んでいることから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
細胞表面に存在する糖鎖の機能について検討する。具体的には、コンドロイチン硫酸や膜補体制御因子がヒストンによる細胞障害、臓器障害に対し、保護的に作用するか、それらの物質が治療薬として応用可能であるかどうかをin vitroおよびin vivoの系を用い評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
445円の次年度使用額が生じたが、小額のため、該当する試薬の購入が不可能であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度予算内に組み込み、必要試薬の購入に充てる。
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