研究実績の概要 |
播種性血管内症候群の発症・進展に関与する細胞外ヒストンをマウスへ投与し、疾患モデル動物の作製および解析を行うことで、同疾患の発症・進展に凝固-補体系クロストーク(特にC5レベル)が関与することを報告している(Mizuno et al., Sci Rep. 2017)。しかし、詳細なメカニズム、特に膜補体制御因子の関与については不明である。そこで平成29年度より、培養細胞および疾患モデル動物を用い、膜補体制御因子の関与について検討を行った。平成29年度の研究成果として、細胞外ヒストンをマウス血管内皮細胞へ暴露したところ、細胞表面に存在する膜補体制御因子の発現が低下することを報告している。平成29年度の成果を踏まえ、平成30年度はin vivoでの検討、すなわちマウスへ細胞外ヒストンを投与し、同様の所見が認められるかどうか検討した。肺組織より血管内皮細胞を採取し、細胞表面の膜補体制御因子(Crry)発現を測定したところ、肺障害の進展に伴い、Crryの発現低下が確認された。さらに肺組織における補体活性を評価したところ、活性の指標となるC3bの発現は、肺障害の進展に伴い、増加していた。すなわち、細胞外ヒストンにより肺組織における膜補体制御因子の発現低下が認められ、C3bレベルでの補体活性化や組織障害に関与していることが示唆された。今後、C3bレベルで補体活性を制御する抗補体薬が播種性血管内症候群の治療に有用であるかどうか、播種性血管内症候群モデル動物を用いて検討する。
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