研究課題/領域番号 |
16K18963
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
山本 篤司 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助手 (90633991)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脂肪酸結合タンパク質 / FABP / 疎水性薬物 |
研究実績の概要 |
脂肪酸結合タンパク質(fatty acid-binding protein, FABP)は細胞内に豊富に存在し、脂肪酸のみならず疎水性薬物の細胞内輸送を担うと考えられている。しかしながら、FABPに結合する薬物種や、薬物動態への影響についてはほとんど研究されていない。本研究では、大腸菌発現系により調製したFABPを用いて様々な薬物との結合様式の解明すること、培養細胞を用いてFABPが薬物動態に与える影響を解明することを目的としている。 平成29年度は、10種のFABPアイソフォームのうちFABP1~5について大腸菌発現系を用いてリコンビナントタンパク質を調製し、蛍光物質ANSとの置換反応を利用した薬物結合能の比較解析を行った。その結果、FABP1, 5には高い親和性を示すが、FABP4に対して低い親和性を示す薬物を複数見出した。特にFABP4と5は53%と比較的高い相同性を示すにも関わらず、薬物結合能に違いが認められた。この結果は、組織ごとの薬物動態を理解する上で重要な知見になるとともに、薬物結合に重要なアミノ酸残基の特定に有用であり、アイソフォーム特異的な阻害剤の創製にも応用できると期待できる。 また、培養細胞実験にも着手しCOS7細胞およびHEK293細胞にLipofection法を用いてFABP1を強制発現させWestern blottingにより発現を確認した。今後は、FABP1を強制発現させた細胞を用いて薬物取り込み能への影響を解析し、変異体との違いや薬効発現への影響についても解析していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、平成29年度では培養細胞を用いた実験に着手し、細胞用FABP1発現ベクターの構築、発現の確認まで終えている。さらに、FABP1を強制発現させた細胞へのフェノフィブラートの添加実験を進めている。添加した薬物の取込量を評価する必要があると考え、HPLCを用いた薬物取込量の評価系を確立した。 さらに、FABPアイソフォームの構造が非常に類似しているのも関わらずアイソフォーム特異的に結合する薬物を見出せたことから、薬物結合に重要と考えられるアミノ酸残基を絞ることができた。以上の結果から概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
FABP1の強制発現系が構築できたため、平成30年度では培養細胞を用いてFABPの発現に伴う薬物取り込み能、薬効発現に与える影響を解析する。細胞にFABP1を強制発現させた後、フェノフィブラート等の薬物を添加し、薬物取り込み量をHPLCで、遺伝子発現変化をリアルタイムPCRで解析する。また、FABPの細胞内局在解析にも着手する。FABP1の推定核移行シグナル配列をAlanineに置換し、GFPを融合したキメラ変異体を作製する。現在、野生型の発現プラスミドは構築済みのため、局在解析と同時に変異体作製に取り掛かる。さらに、大腸菌発現系の実験ではFABPアイソフォーム間で薬物結合能に違いが見出されたため、その原因となるアミノ酸残基を推定し、アミノ酸変異体を作製することで検証実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年3月末に注文した品が、4月納品となったため繰越金が生じた。
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