前々年度では、自己乳化型製剤の調製を試みた。前年度では、自己乳化型製剤が消化管内で薬物の過飽和溶解を起こすことを検証してきた。in vitroにおいて、消化管内の環境を模した条件で種々検討を行った結果、製剤中脂質成分がリパーゼで消化されることで消化管内溶液にfree薬物が過飽和状態で放出されることが要因の一つとして考えられた。また、これは、製剤中脂質の構成脂肪酸による違いが観察され、自己乳化型製剤化を試みる際には、消化管内での挙動を予測することが重要と考えられた。 吸収の律速過程が溶解度の場合には、過飽和溶解を利用した溶解度の改善が有用と考えられる。そこで、当該年度では、自己乳化型製剤による血中曝露の改善効果を他の製剤と比較検討した。比較製剤として、可溶化剤や非晶質固体分散体製剤を用いた。モデル薬物として、フェノフィブラートを用い、まず、ラットにおいて、溶解度律速になる投与量を指定した。フェノフィブラートの種々濃度で調製した懸濁液をラットに経口投与し、血中濃度を観察した。その結果、50mg/kg以上の投与量で血中曝露が頭打ちすることが明らかとなり、この投与量で各製剤を投与した。自己乳化型製剤として、前年度と同様のものを2種類調製し、各製剤中に飽和溶解度までフェノフィブラートを溶解させたものを実験使用した。その結果、可溶化剤や固体分散体では、消化内模擬液中で速やかなフェノフィブラートの析出が観察され、曝露量の改善効果もわずかであった。一方、2種類の自己乳化型製剤は、効果的に曝露量を改善した。このことから、自己乳化型製剤は、難水溶性薬物の血中曝露の改善有用であることが示された。
|