研究実績の概要 |
平成29年度は、ヒト苦味受容体タンパク(hTAS2Rs)と苦味物質および苦味抑制物質(クロロゲン酸等)の相互作用を評価するために、まず各種苦味物質の、味覚センサへの応答性と、25種存在するhTAS2Rsへの応答性との相関性を評価し、苦味発現に与える影響が大きいhTAS2Rsサブタイプを抽出することにした。対象薬物は臨床で経口製剤として使用されている薬物22種(キニーネ、アセトアミノフェン、アザチオプリン、カフェイン、クロラムフェニコール、クロルフェニラミン、コルヒチン、クロモリン、デキストロメトルファン、ジフェンヒドラミン、ジフェニドール、エリスロマイシン、ファモチジン、フルフェナム酸、ハロペリドール、ヒドロコルチゾン、メチマゾール、ノスカピン、オフロキサシン、パパベリン、プロピルチオウラシル、ストリキニーネ)を用いた。各種薬物(0.01、0.03、0.1 mM)を味覚センサ(AC0, AN0, BT0, C00, AE1)で測定し、各センサ応答(濃度依存的にセンサ出力の増加が認められ、薬物0.1 mMのセンサ出力値が2 mV以上であること)の有無と、Bitter DBより得たhTAS2Rsへの応答の有無の相関性をFisherの正確確率検定により評価した。薬物の塩基性苦味膜BT0への応答とhTAS2R14への応答には有意な相関が認められた。また、塩基性苦味膜AN0への応答とhTAS2R10には相関傾向が認められた。これらhTAS2R14, hTAS2R10は幅広い種類の苦味物質を受容することが知られていることからも、これらの受容体が25種のサブタイプの中でも特に苦味発現に重要なサブタイプであることが考えられた。
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