研究実績の概要 |
ヒトiPS細胞から肝細胞を安定的に得るため、フィーダーフリーのiPS細胞から肝分化誘導系へ移行し、カルボキシペプチダーゼM(CPM)の発現を指標に、肝前駆細胞を分取した。その結果、マウス線維芽細胞をフィーダー細胞として使用した分化誘導系と比較し、CPM陽性の肝前駆細胞の割合は80%程度に改善し、効率的に肝前駆細胞を得ることに成功した。 また、iPS細胞由来の肝前駆細胞、類洞内皮細胞、星細胞を同一の培養条件で維持する培養条件を検討した。培養後、低接着性培養プレートのマイクロウェル内で、これらの細胞は、三次元的な組織を構築した。さらに、この培養系において、経時的に肝細胞マーカー(アルブミン、CYP2E1)、内皮細胞マーカー(CD31)、星細胞マーカー(NGFR, LRAT)の発現について解析したところ、長期的にこれらのマーカー遺伝子の発現は維持された。この結果から、三種の異なる細胞を同一の培養系で維持可能であることが示唆された。 次に、iPS細胞由来の肝組織を用いた疾患モデルを開発するため、肝障害物質である四塩化炭素をiPS細胞由来の肝細胞培養系に添加し、肝細胞死の有無を評価した。四塩化炭素を添加し、24時間以内で細胞はプレート面から剥離した。剥離した細胞は、核染色液であるPropidium Iodideによって死細胞として検出された。以上より、作製したiPS細胞由来肝細胞は、肝障害モデルの開発に有用であることが示唆された。その他の、肝炎ウイルス感染系を含む肝疾患モデルについては、現在解析を進めている。
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