研究課題
ラット脊髄神経節培養を調整し、神経細胞にミトコンドリア標的蛍光蛋白Dendra2(mitoDendra2)をレンチウイルスベクターを用いて導入した。有髄および無髄軸索において紫外線照射で色変換(緑色→赤色)後、共焦点レーザー顕微鏡下で長期(10時間以上)のライブイメージングを行い、静止ミトコンドリア内の赤色蛍光蛋白と外部から輸送される緑色蛍光蛋白のターンオーバーを観察した。その結果、多くのミトコンドリアが軸索内において非常に安定な状態で長時間静止していること、さらにより大きな静止ミトコンドリアは長時間静止することがわかった。また、変換後に色の戻る速度(ターンオーバー)と相関する因子の同定を試みたところ、軸索におけるミトコンドリアの輸送速度と輸送されるミトコンドリアの数が有意に相関することが分かった。次にミトコンドリア標識および小胞体標識蛍光蛋白を培養神経細胞に導入し、有髄および無髄軸索において共焦点レーザー顕微鏡下で長期(10時間以上)のタイムラプスイメージングを行い、静止および輸送ミトコンドリアと小胞体の動態および光学顕微鏡レベルの共分布の時間的変化を検討した。その結果、ミトコンドリアと小胞体の分布は相関関係を示し、静止ミトコンドリアが長時間滞在している軸索部分の小胞体の蛍光強度が高い傾向がみられた。また、マウスの尾神経を用いて、ミトコンドリアと小胞体の変化をミクロトーム組み込み式走査型電子顕微鏡を用いて解析を開始した。その結果、ミトコンドリアと小胞体の分布に相関関係がみられ、また豊富なミトコンドリアと小胞体の接触部(mitochondria associated membranes)がみられることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
ラット脊髄神経節培養とミトコンドリア標識および小胞体標識蛍光蛋白によるライブイメージングの研究が順調に進んでいる。またミクロトーム組み込み式走査型電子顕微鏡による解析においてもデータの取得を開始できており、おおむね順調に進んでいると考えられる。
神経細胞に分裂融合関連分子や輸送関連分子、分解関連蛋白の正常型および変異型を導入し、ターンオーバーの変化を観察することで、ターンオーバーに影響を及ぼす因子の同定と修飾の影響の解析を進める。またAMPKの修飾に伴うターンオーバーの変化の観察も進める。ミトコンドリア機能(膜電位)を比較するため、これらの処理下で膜電位感受性色素を用いたミトコンドリアの機能評価も行う。さらに、正常マウスの中枢・末梢神経組織を用いて、電子顕微鏡用試料を作製し、Serial Block Face- Scanning Electron Microscopy(SBF-SEM)を用いて連続電子顕微鏡画像を取得後、超微形態の3次元再構築を行い、ミトコンドリアと小胞体の相互作用の詳細な立体的分布および表面積を解析する。またミトコンドリアと小胞体の結合に関わる分子(Mfn2、VDAC1、IP3R)に対して包埋前免疫染色後にSBF-SEM観察し、ミトコンドリアと小胞体の相互作用における結合関連分子の分布を明らかにする。
異動に伴って、既に施設で保有されていた消耗品を使用することができたため、予定以上に積極的な成果発表に伴う費用の増大があったものの、当初の予定よりも大幅に物品費を削減し、研究計画を遂行することができた。
今後、さらにデータの取得を進めるとともに引き続き積極的な成果発表を行う予定であり、これらの費用として使用する予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 4件)
Sci Rep.
巻: 7 ページ: 42257
10.1038/srep42257.
J Cell Biol.
巻: 215 ページ: 531-542