研究課題
本研究の目的は精母細胞に発現する miR-34c について、その標的遺伝子、関連因子を組織化学的手法を用いて解析することである。平成28年度に於いてはこの目的を達成するための手法の確立として、超解像顕微鏡を用いた共局在の解析と免疫沈降法による2因子の直接の結合の確認を行った。具体的には精母細胞に共発現する DNA メチル基転移酵素1 (Dnmt1) と proliferating cell nuclear antigen (PCNA) を対象に蛍光二重染色を行い、超解像顕微鏡により、その局在を観察した。Dnmt1 には PCNA 結合ドメインが存在しており、二つの因子の機能的関連も報告されているため、ポジティブコントロールとして最適であると考えこの2因子の解析からスタートした。構造化照明法による観察ではマウス精母細胞核内に於けるこの2因子の発現は核小体領域及び sex body 領域を除く領域に広範に多くのドットとして観察された。また、それらのドットの多くは 100 nm 未満の距離に共局在していることも明らかとなった。そこでこの2因子が直接結合しているかどうかを証明するためにマウス精巣の抽出液を用いて免疫沈降を行ったところ、直接の結合が確認された。一方で超解像顕微鏡の観察に於いて共局在が認められなかった Dnmt3a 及び PCNA に於いては免疫沈降法により直接結合はしていないという結果が得られた。より高い解像度による観察を行うため、確率的光学再構築顕微鏡の条件の検討も行い、405 nm の光で一定確率で励起される蛍光色素を用いることにより安定して 20 nm 前後の解像度の解析を行うことが可能となった。
2: おおむね順調に進展している
本研究に於いては目的を遂行するために手法の確立が最も高いハードルとなる。平成28年度はこの点に注力し、Dnmt1 及び PCNA をポジティブコントロールとして用いることにより 100 nm 以下の共局在の観察と、直接の結合の対応を証明できた。また、精母細胞内で特徴的な発現パターンを示す SCP3 に対する免疫組織化学を行い、確率的光学再構築顕微鏡の条件検討も完了することができた。これらの成果は平成29年度に於いて miR-34c の解析を行うことが可能であることを保証するものであることから、順調に進展していると考えられる。
平成29年度に於いては miR-34c の解析を進展させることを予定している。in situ hybridization 法による二重染色は miR-34c 及び 28S rRNA についてはすでに成功しているため、本年度は標的候補遺伝子との二重染色を行う。miR-34c を過剰発現させた精巣を用いた解析により、実際に発現が減少している遺伝子を絞り込むことが可能であるため、miR-34c の機能と共局在の関係を考察するための準備も整っている。In situ hybridization と免疫組織化学による二重染色に関しても 28S rRNA 及び核小体タンパクではすでに可能であるため、microRNA に対する in situ hybridization への応用は可能であると考えている。in situ hybridization 法に於けるハプテンの選択、免疫組織化学を直接法、関節包で行った際の結果の比較、妥当性の検討が重要なポイントとなることが考えられるため、この点について適切なポジティブコントロールを用いつつ研究を遂行していく予定である。
平成28年度は i situ hybridization 法を行う回数が少なかったため、必要な試薬等の購入量が予定より減少した。
平成29年度に於いては microRNA に対する in situ hybridization 法を頻回に行う予定であるため、28年度から繰り越した研究費をそのための試薬の購入に充てる予定である。
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