研究課題
脳は血液脳関門によって血中の有害な物質から守られているが、血中のエンドトキシンは発熱や摂食量や飲水量の低下といった脳を介する反応を引き起こす。しかし、エンドトキシンを前投与しておくとこれらの反応は抑制される。この現象はエンドトキシン耐性と呼ぶがメカニズムは不明である。脳弓下器官は脳の中でも血液脳関門を持たず、エンドトキシンを含む様々な血中分子の受容体を持つ。エンドトキシンのリポ多糖を末梢から投与すると、脳弓下器官において炎症性サイトカインIL-1βが産生されるが、リポ多糖を繰り返し投与すると産生が抑制されることから、脳弓下器官がエンドトキシン耐性に関与していることが示唆される。この研究は脳弓下器官におけるIL-1β産生細胞の特徴をエンドトキシン耐性のあるマウスと無いマウスで比較することを目的として行った。リポ多糖に反応してIL-1βを産生したのは、ミクログリアではなく血管周囲腔に限局する血管周囲マクロファージであった。末梢から投与したリポ多糖は脳弓下器官の血管周囲腔に認められた。血管周囲マクロファージを除去するとリポ多糖投与後のIL-1βの発現は抑制された。エンドトキシン耐性のあるマウスでは脳弓下器官の血管周囲マクロファージにおけるリポ多糖投与後のIL-1βの発現レベルが低下した。これらの結果は脳弓下器官において血中のリポ多糖に反応してIL-1βを産生するのは血管周囲マクロファージであることを示す。脳弓下器官は血液脳関門を持たないことで知られているが、この結果はリポ多糖の受容が血管周囲腔に限局して行われていることを示唆する。さらに、脳弓下器官でIL-1βを産生しないことがエンドトキシン耐性の原因であるかもしれない。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
J Neuroinflammation.
巻: 16 ページ: 39
10.1186/s12974-019-1431-6.
Neurochem Int.
巻: 128 ページ: 135-142
10.1016/j.neuint.2019.04.007.