研究課題/領域番号 |
16K18982
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
中倉 敬 帝京大学, 医学部, 講師 (60568658)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 微小管 / αチューブリン / アセチル化修飾 / 下垂体 / ACTH細胞 / グルココルチコイド受容体 / ATAT1 / 核移行 |
研究実績の概要 |
微小管はαおよびβチューブリンにより構築されるストロー状の構造であり、細胞骨格として細胞質にはり巡らされるとともに、細胞内輸送における配送レールとしての役割も担っている。また、αチューブリンは微小管内腔に面する40番目のリジン残基(K40)がアセチル化されることが知られるが、内分泌細胞における役割については不明であったことから、申請者はこれまでに、マウスACTH細胞株AtT20を用いた解析を進めることで、ATAT1 mRNAの発現は副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンとグルココルチコイドによって調節され、αチューブリンのアセチル化修飾がグルココルチコイド受容体(GR)の核移行を促進させることを明らかにしてきた(Nakakura et al. Cell Tissue Res. 370: 169-178, 2017)。 本年度は、GRおよびその複合体によるαチューブリンアセチル化修飾の認識機序を明らかにするため、①AtT20細胞を用いてαチューブリンアセチル化修飾部位変異体プラスミドを過剰発現するための条件検討を行うとともに、②ATAT1ノックダウンAtT20細胞からの細胞破砕液を用いた抗GR抗体および抗αチューブリン抗体による共免疫沈降法の確立を試みた。また、GR以外の核内受容体とαチューブリンアセチル化修飾との関連も明らかにするため、③ラット下垂体細胞株GH3およびヒト乳腺癌由来細胞株MCF7を用い、ATAT1をノックダウンした際の主要遺伝子の発現をリアルタイムPCRで、リガンド依存的な受容体の核移行を、核画分を対象にしたウエスタンブロット法で解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
AtT20細胞に導入を試みているαチューブリンプラスミドの発現状況が悪いため、プロモーターやトランスフェクション方法の検討を進めているが、いまだ改善できず、現在までに実験データを得るに至っていない。また、ATAT1ノックダウン細胞からの細胞破砕液を用いた共免疫沈降法も進めているが、GRと微小管の結合力が弱いためか、通常のプロトコルでは目的分子を得られないため、現在、共免疫沈降法の条件を検討中している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
αチューブリンアセチル化修飾部位の変異体プラスミドの過剰発現実験と微小管を対象にした免疫沈降法を確立したうえで、αチューブリンのアセチル化修飾部位に対する変異体および野生型プラスミドをそれぞれAtT20細胞に過剰発現させ、その破砕液を用いて抗αチューブリン抗体による共免疫沈降法を行う。得られた沈降サンプルから、SDS-PAGEにより野生型で特異的に見られるバンドを切り出し、LC-MS/MSで含まれる物質を特定する。さらに、特定した物質をFLAG タグ融合タンパク質としてAtT20 細胞に強制発現させ、タグを指標に共免疫沈降法を行い、ウエスタンブロット法でアセチル化αチューブリンやGRの共沈を調べ、アセチル化認識因子の同定する。以上から、チューブリンアセチル化修飾とGR核輸送を結ぶ分子機序を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
進歩状況に記載のように実験計画に遅れが発生したため、繰越金が生じている。繰越金の使用用途としては、細胞培養用試薬(培地、培養シャーレなど)やプラスチック器具類(チップ、メスピペットなど)の購入に充てる予定である。
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