微小管はαおよびβチューブリンにより構築される管状構造であり、細胞骨格として細胞質にはり巡らされるだけでなく、細胞内輸送時の配送レールとしての役割も担っている。また、αチューブリンは微小管内腔に面する40番目のリジン残基(K40)がアセチル化されることが知られる一方で、細胞内の物質輸送が盛んな内分泌細胞における役割については不明であった。このような中で申請者はこれまでに、マウスACTH細胞株AtT20を用いた解析を進めることで、アセチル化酵素ATAT1の遺伝子発現がホルモンによる調節を受けることや、αチューブリンのアセチル化修飾がグルココルチコイド受容体(GR)の核移行を促進させることを明らかにしてきた。 本年度は、GRおよびその複合体によるαチューブリンアセチル化修飾の認識機序を明らかにすることを目的として、前年度に引き続き①AtT20細胞を対象に抗αチューブリン抗体および抗GR抗体を用いた微小管の免疫沈降法の確立と、②αチューブリンアセチル化修飾部位変異体プラスミドを過剰発現するための条件検討を進めてきた。 ①については、各抗体で免疫沈降を行ったうえで目的分子(抗αチューブリン抗体で免疫沈降した場合はGR、抗GR抗体で沈降した場合はチューブリン)に対してウエスタンブロット解析を行って沈降効率の確認を進めてきたが、GRとチューブリン(微小管)の結合力が弱く、安定した条件の確立には至らなかった。 ②については、前年度の検討状況からAtT20細胞へのリポフェクション法でのプラスミド導入が困難だと考え、エレクトロポレーション法などでもトランスフェクションを試みた。しかし、過剰発現実験を行える程度の遺伝子発現が見られず、計画していた実験データの取得には至らなかった。
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