研究実績の概要 |
様々な発生時期の海馬歯状回原基の神経幹細胞を標識する手法を用いて、成体期で維持され続けている神経幹細胞がいつ誕生するかを明らかにする。またこれまで謎であった歯状回の顆粒細胞層の層形成メカニズムの解明も目的としている。これまでの研究により顆粒細胞層形成のパターンを明らかにしている。 今回は成体期神経幹細胞がいつ誕生するかについて解析を行った。具体的には、 E14, E16, E18, P0, P2で電気穿孔法を行い、P15での標識細胞の分布を調べた。その結果、E14で標識された細胞については顆粒細胞層下帯において神経幹細胞の存在が認められた。一方、E16以降のステージに標識された細胞については、神経幹細胞は観察されなかった。この結果から、海馬歯状回に存在する神経幹細胞はより初期のステージで誕生していることが示唆された。これは生後初期のステージに神経幹細胞が誕生するという先行研究とは異なっているものであった。その可能性としては神経幹細胞の誕生領域が異なっていることに起因するのかもしれない。 今回見出した成体期に神経幹細胞として維持される細胞集団が、実際どのような因子の発現によって制御されているかを今後さらに解析することによって、神経幹細胞を任意の場所に産出させることも可能となる。 それによって神経変性や損傷によって機能が損なわれてしまった中枢神経系において、神経再生に寄与しうる可能性が期待される。
|