哺乳動物の生殖機能は視床下部-下垂体-性腺軸(HPG軸)という調節ユニットによりコントロールされている。視床下部視索前野に存在する性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロンはHPG軸の中枢であることから、GnRHニューロンの機能調節メカニズムを明らかにすることは、生殖機能の向上や、中枢に起因する生殖機能障害の新しい治療法の開発につながると考えられる。ストレスにより生殖機能が低下することは広く知られている。ストレスにより視床下部において局所的な炎症が惹起されることが報告されているが、GnRHニューロンと脳内炎症の関係については明らかにされていない。本研究では、炎症時に脳内で産生される種々のサイトカインとGnRHニューロンの関わりを明らかにするために、マウス由来GnRHニューロンの不死化細胞株として樹立されたGT1-7細胞を用いて以下の実験をおこなった。GT1-7細胞における炎症性サイトカインとその受容体の発現をRT-PCR法により検討した結果、GT1-7細胞にはTNF-α、IL-1β、IL-6とそれらの受容体の発現することが分かった。このことはこれらのサイトカインがGT1-7細胞に対して直接作用することを示唆している。さらにリコンビナントTNF-αをGT1-7細胞の培養液中に添加したところ、転写因子であるNF-κB p65タンパク質の細胞質から核内への移行が観察された。これらの結果から、TNF-αはGT1-7細胞に作用し、GT1-7細胞の機能に何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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