研究実績の概要 |
高血圧症の誘因として過剰摂取が問題となる食塩の「おいしさ」を司る上皮型ナトリウムチャネル (Epithelial Na+ Channel, ENaC)依存性塩味受容の細胞分子メカニズムの解明を目指して研究を行なった。具体的には、舌における化学センサー器官である味蕾での塩味の符号化様式を解明すべく、コンディショナル・ジーンターゲティングによるリバースジェネティクスの手法を駆使して、塩味受容の細胞基盤の解明を目指した。本年度は上記目的達成のために、ENaCαサブユニットの遺伝子発現解析のために作出した複数のマウスモデルの組織解析および機能解析、さらには特定の味細胞種選択的なENaCノックアウトマウスの作出を行なった。 発現解析では、ENaCのポア形成サブユニットであるαサブユニットが従来から知られているI型II型III型味細胞とは異なる細胞集団に発現していること、さらにはENaC発現細胞において細胞の興奮性を司るタンパク質群の発現を見出し、塩味受容細胞の細胞内シグナル変換機構・神経伝達のメカニズムを示唆する結果を得ている。また機能解析では、ENaC発現細胞のもつ興奮性や細胞内カルシウム動態などが明らかとなり発現解析で見出した分子の機能を観察することにも成功している。 また、トラブルにより予定よりも遅れていた細胞種選択的なENaCノックアウトマウスの作出も完了し、味覚行動実験・神経応答記録などを用いて同定した塩味細胞の役割を個体レベルで検証を始めている。
|