研究課題/領域番号 |
16K18993
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
照井 貴子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (10366247)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 循環生理 |
研究実績の概要 |
本研究では、近年急速に発展している分子イメージング技術を駆使し、心臓の心筋線維の最小ユニットであるサルコメアの収縮動態をin vivoで高い時間・空間分解能でライブイメージングできる技術を開発することで、生体内の心筋収縮・弛緩をナノレベルで可視化し、心筋の収縮・弛緩の分子メカニズムの解明をねらう。 生命科学・医学研究において生体内の様々な制御メカニズムを解明するためには、in vitro のみならずin vivoでの分子メカニズムの解明が待たれるが、心筋研究においては、心臓自体が常に拍動し続けている臓器であるため、その技術的な難しさからin vivo研究はほとんど行われていない。 心筋の収縮・弛緩のメカニズムや心不全の病態メカニズムを明らかにするためには、特定の分子の動きを動物個体内で観察する必要がある。この考えに基づき、蛍光色素、遺伝子組み換えウィルスベクターを用いて蛍光タンパク質を発現させることにより心筋サルコメアのイメージング(Z線イメージング)を高時間(~2 ms)・空間(~5 nm)分解能で行う。 in-vitroからin-vivoイメージングへ研究を進めていく上で、非常に重要なex-vivoイメージング装置を開発し、本研究をより実質的かつ装置系に段階性を持たせて進められ、ex-vivoイメージング装置を実際に使用し、擬似生体内での心筋サルコメアの収縮・弛緩動態をイメージング可能となった。また一般的に、心臓の心筋収縮自体は、いわゆる心臓のペースメーカー(洞結節)からの心拍により活動電位が生じ、その伝搬によりCa2+イオン濃度が上昇し心筋細胞が収縮するといわれている。当該年度は、ex-vivoイメージング装置を拡充し、その収縮様式の詳細、また、Ca2+イオン濃度変化のない状態での心筋細胞の動態についての検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ex vivo心筋ナノイメージング装置の改良: 心筋の収縮弛緩の分子メカニズムを明らかにするためには、特定の分子の動きを動物個体内で観察する必要がある。これまでに得られたナノイメージング技術を小動物(ラット、マウス)in vivoに応用し、生体内での心筋収縮・弛緩のメカニズムの解析を行う前段階として、ラット摘出心を用いてランゲンドルフ還流下に顕微鏡観察ができるex-vivoイメージング装置を構築した。心筋サルコメア、心筋のZ線/Z線付近に存在するタンパク質(αアクチニン)と蛍光タンパク質(EGFP)を融合させた遺伝子組換えウィルスベクターを用いて心筋サルコメアに蛍光タンパク質を発現させることにより、より鮮明に心筋サルコメアを蛍光顕微鏡で描出できると考えている。 これまでのイメージング装置の蛍光顕微鏡部分に、2つの蛍光波長を切り替えて蛍光観察ができるイメージング装置(2光路系)を慈恵医大細胞生理学講座福田研究室との研究協力の上、構築するに成功した。この2光路系イメージング装置を使用することで、これまでの蛍光観察に加え、より踏み込んだ観察が可能と考えられ、ex-vivo還流システムと併用することで、心臓の収縮・弛緩に関する動態に関する解析が加速すると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ex-vivo イメージング装置を用いた心筋細胞動態の観察 ex-vivoイメージング装置を使用し、生体内という条件にかなり近い形での心筋サルコメアの収縮・弛緩動態をイメージング可能となった。また一般的に、心臓の心筋収縮自体は、いわゆる心臓のペースメーカー(洞結節)からの心拍により約1秒に1回の頻度で活動電位が生じ、心臓全体に伝搬する。その伝搬により心筋細胞内のCa2+イオン濃度が急激に上昇し、心筋細胞が収縮するといわれている。ex-vivoイメージング装置を用いることにより、その収縮様式について、詳細に観察することが可能となった。また、Ca2+イオン濃度変化のない状態での心筋細胞の動態についても検討できることが示唆された。除膜心筋収縮系サルコメアは,Ca2+濃度一定の条件下で自発的に振動し(SPOC:Spontaneous Oscillatory Contraction)、その振動数は動物種に固有の心拍数と相関することが報告されている(Sasaki et al. 2005)。また、心筋細胞に抗αアクチニン抗体-量子ドット複合体を導入することによりZ線をイメージングすることが可能であり、生理的な電気刺激頻度においてSPOCに類似した鋸波の振動波形が出現することが判明している(Serizawa et al. 2011)。今後は、膜電位感受性色素を細胞に導入させることなども併用し、すでに構築しているイメージング装置を駆使し、細胞レベルで確認されている心筋サルコメアの自励振動(SPOC)が、臓器レベルで確認されるかどうか、ex-vivoイメージング装置を用いて心筋細胞動態を詳細に観察できる系で検討する。さらに、ex-vivoイメージング装置の摘出心還流システムの改良を行い、摘出心臓を還流させる灌流液の電解質組成をリアルタイムで確認できるシステムの検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ex-vivoイメージング装置の改良・使途拡大 ex-vivoイメージング装置の摘出心還流システムの改良を行い、摘出心臓を還流させる灌流液の電解質組成をリアルタイムで確認できるシステムの検討を行っており、電解質組成(Ca2+、K+ etc…)を測定する装置系を検討中であり、近日中に購入し、灌流下ex-vivoイメージング装置の改良および拡張を行う予定である。また、予備試験では、遺伝子組換えウィルスベクターを用いてラット心臓にαアクチニン-EGFPの発現が可能であることが確認できており、今後ex vivoイメージングへ応用していく。
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