研究課題/領域番号 |
16K18994
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
大平 宇志 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 有人宇宙技術部門, 研究開発員 (40633532)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 骨格筋 / サルコリピン / カルシウムハンドリング |
研究実績の概要 |
先行研究の結果からは、不活動や各種疾患に伴う筋細胞質内カルシウムイオン濃度の増加がタンパク質分解系を活性化させ筋萎縮誘発の引き金となっている可能性が示唆されている。しかし、筋萎縮過程に筋細胞質内のカルシウムイオン濃度が上昇する分子メカニズムは明らかにされていない。研究代表者は、細胞質内のカルシウムイオンを筋小胞体へ取り込む際に重要な筋小胞体カルシウムATPアーゼの機能を抑制することが知られているサルコリピンに着目し、萎縮過程にある骨格筋におけるサルコリピンの役割を追究する研究を遂行している。 サルコリピンは約4 kDaの小さなタンパク質であり、タンパク質レベルでの発現量評価を行うためには実験条件を最適化する必要がある。研究代表者は、坐骨神経切除後14日が経過したラットのヒラメ筋より抽出したタンパク質を用いて、ウェスタンブロッティング法によりサルコリピンタンパク質の発現量の評価を可能とする最適な条件を確立した。また、坐骨神経切除筋および偽手術筋より抽出したタンパク質を用いた解析から、萎縮が進行したヒラメ筋においてサルコリピンタンパク質が顕著に増加していることも確認できた。現在は、坐骨神経切除後のマウスヒラメ筋および長趾伸筋において、サルコリピンタンパク質の発現がどのようなタイムコースで誘導されるかの検討を行っている。 今後は、サルコリピンノックアウトマウスおよび野生型マウスの後肢骨格筋について神経切除に伴う筋萎縮の過程を比較することにより、サルコリピンタンパク質の増加と筋萎縮の関係を明らにしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の現所属機関である宇宙航空研究開発機構筑波宇宙センターでは、宇宙実験と直接関係のない実験動物を飼育することができない。したがって、本研究の動物実験は研究代表者の前所属機関である東京慈恵会医科大学で実施する必要がある。審査に想定以上に時間を要したが、平成29年度末に動物実験計画について東京慈恵会医科大学の動物実験倫理委員会からの承認を得ることができた。しかし、その後年度内に必要な個体数のサルコリピンノックアウトマウスを用意し、実験を実施することは困難であった。 サルコリピンのタンパク質レベルでの発現量を評価する実験条件はすでに確立できており、坐骨神経切除後14日が経過したラットのヒラメ筋より抽出したタンパク質の解析からは筋萎縮に伴いサルコリピンタンパク質が顕著に増加することも確認できている。したがって、平成30年度にサルコリピンノックアウトマウスを用いた実験を実施することにより、萎縮過程の骨格筋における筋細胞質内のカルシウムイオンの増加とサルコリピンの関係を明らかにすることができると考える。
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今後の研究の推進方策 |
サルコリピンノックアウトマウスを継代飼育し、系統を維持している東京慈恵会医科大学の細胞生理学講座に所属する研究者からの協力も得、筋萎縮過程におけるサルコリピンの役割を追究する。具体的には、サルコリピンノックアウトマウスと野生型マウスの後肢骨格筋(長趾伸筋およびヒラメ筋)について坐骨神経切除後の萎縮の進行程度を比較する。この際、各骨格筋の形態(筋湿重量および筋線維横断面積)の評価だけでなく、単一筋線維内のカルシウムイオン濃度とサルコリピン発現量の関係性についても解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
東京慈恵会医科大学の動物実験倫理委員会から本研究の動物実験計画についての承認が得られるまでに想定した以上に時間を要したため、平成29年度内にサルコリピンノックアウトマウスを用いた実験に着手することができなかった。サルコリピンノックアウトマウスを用いた実験は本研究の重要な特徴であるため、研究期間を1年間延長し平成30年度中に実施する。
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