研究課題/領域番号 |
16K18997
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
竹田 有加里 立命館大学, 生命科学部, 助教 (20582159)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 受容体・細胞内シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
GPR40は主に膵β細胞で非常に多く発現しているGタンパク質共役受容体で、中長鎖脂肪酸が結合するとグルコース濃度に依存してインスリン分泌を増強するが、その制御機構は不明である。本研究は、長鎖脂肪酸DHA・EPA刺激によるグルコース濃度依存性インスリン分泌増強作用、並びに腸管ホルモンGLP-1との同時刺激によるインスリン分泌相加・相乗作用の分子機構を検討し、理論研究によって定量的・総合的に解明することを目的とする。実験と理論の反復的フィードバックによる独創的アプローチでGPR40・GLP-1Rの下流シグナル制御のクロストークを検討すると共にβ細胞の機能制御機構について更に理解を深めるばかりでなく、DHA・EPAとGLP-1との同時刺激によるによるインスリン分泌の効率性・安全性を検討し、安心・安全な糖尿病治療の実現を目指す。 本年度は、当初平成30年度の研究実地計画であったDHA・EPA刺激やGLP-1との同時刺激による[Ca2+]iの上昇を再現し、それに伴うインスリン分泌増強作用メカニズムを定量的・総合的に解析するための包括的数理β細胞モデルの構築をおこなった。数理解析の結果、IP3Rの活性化を介したER内カルシウムの減少によるSOCCのコンダクタンスの上昇がインターバースト期間を縮小させる最も重要な要素であった。またIP3Rの活性化は、Na/Ca exchangeerのdeactivationを減少させることで バースト持続時間を上昇させるばかりでなく、IP3R近傍のCa2+濃度の顕著な上昇を齎すことからIP3Rを介して流出するCa2+が直接インスリン分泌を惹起する可能性が示唆された。そこで、細胞膜直下に小胞体が存在している作業仮説を提案する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、平成30年度の研究実施計画を本年度に行い、DHA・EPA刺激による[Ca2+]iの上昇を再現し、それに伴うインスリン分泌増強作用メカニズムを定量的・総合的に解析する基盤を構築した。今後、実験で得られた結果に応じてモデルを精緻化し、再度、シミュレーションおよび数値・数理解析を行うことを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、マウス膵島β細胞がグルコース刺激によってバーストを発生させる生理的条件下において、DHA・EPA刺激がどれだけインスリン分泌増強作用をもたらすか、さらにGLP-1とDHA・EPAの相加・相乗作用を検討する。 A) マウスisletにおいて、DHA・EPAによるGPR40刺激がインスリン分泌を惹起するのか、またその作用にグルコース濃度依存性が認められるか、さらにDHA・EPAのどちらがより有効にインスリンを分泌させるかを検討する。 B) DHA・EPA刺激によるインスリン分泌増強作用メカニズムの検討。GPR40を刺激するとGq/11-phospholipase C (PLC)-DAG・IP3系シグナルカスケードが活性化するため、DAG-PLC-IP3を介するIP3Rの活性化、あるいはDAG-PKC-CaMKIIを介するRyRの活性化によってCa2+遊離が惹起され、インスリン分泌が増強すると考えられる。そこでDHA・EPA刺激によるCa2+動員に由来する成分を検討する。b-1: PKC・CaMKII阻害薬がもたらす影響を検討。b-2: PKC・CaMKII阻害薬で抑制されなかった要素がRYRやIP3R阻害薬で抑制されるかを検討。 C) GLP-1R・GPR40シグナル経路の同時刺激によるインスリン分泌への相加作用・相乗作用、さらにそのグルコース濃度依存性を検討。 D) 二型糖尿病モデルマウスをもちいてA)-C)の実験を繰り返し、それぞれの結果 を野生型ラットを用いた実験結果と比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は当初平成30年の研究実施計画であったシミュレーション及び数理解析を行ったため、予算をすべて使用することは無く、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度の研究実施計画を遂行するにおいて、DHA・EPA、Ex-4(GLP-1作動薬)、GPR40作動薬、RYR・IP3R阻害剤、PKC・CaMKII阻害薬、PKC・CaMKII阻害薬や、インスリン分泌測定キット、また生理学溶液を作成するための各要素を購入するために使用する。
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