研究課題/領域番号 |
16K19001
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
堀内 浩 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, NIPSリサーチフェロー (60760733)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ミクログリア / 力学知覚 / シナプス可塑性 |
研究実績の概要 |
本研究では、ミクログリアが直接シナプスに接触する機能的意義を力学的な観点から考察し、神経細胞の可塑性に寄与することを生体2光子イメージングを用いて明らかにする。 まず、ミクログリアのシナプス接触時間を計測し、機械受容チャネル阻害薬の影響について検討した。子宮内エレクトロポレーションを用いて、Iba1-EGFPマウス大脳皮質の興奮性神経細胞にtdTomatoを導入し、阻害薬を脳内に微量注入した。しかしながら、阻害薬投与下では、シナプスへの接触を観察することができなかった。阻害薬による突起の動態速度の低下、および阻害薬投与によるミクログリアの活性化に伴う形態変化によって長期的な観察が難しいことが原因として考えられる。そこで、候補分子をミクログリア特異的に欠損させることによって、長期的な観察を行うことを予定している。 ミクログリアの機能応答を計測するために、Iba1-tTA::tetO-GCaMP7-DsRed2を作成した。しかしながら、ミクログリアにおけるGCaMP7およびDsRed2の発現は認められなかった。現在、遺伝子導入法を用いたGCaMP6の発現と新たな遺伝子改変動物を用いた解析を進めている。 これまでに、ミクログリアがシナプス接触時にその活動を修飾するかは明らかでない。そこで、ミクログリアのシナプス接触時における神経活動修飾について検討した。当初、神経活動のモニタリングには、Thy1-GCaMP7-DsRed2を使用する予定であったが、蛍光強度に乏しかったため、Iba1-EGFPマウスの神経細胞にアデノ随伴ウイルスを用いて、GCaMP6fおよびtdTomatoを発現させた。ミクログリア接触時にはスパイン活動が上昇することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ミクログリアは傷害に対しても非常に鋭敏に応答し、活性化状態へと形態を変化させることから、薬理的な手法では生理的機能を解析をすることは難しいと考えられる。遺伝学的手法を用いて、機械受容チャネルを欠損させ、機械受容の機能をミクログリア特異的に欠損させることとした。 Iba1-tTA::tetO-GCaMP7-DsRed2マウスを作成したが、ミクログリア特異的な蛍光分子の発現は認められなかった。原因は不明であるが、Iba1-tTA::tetO-GCaMP6マウスの作成、およびミクログリアへの遺伝子導入を進めている。 一方、Thy1-GCaMP7-DsRed2の蛍光発現は低かったため、ウイルスによる遺伝子導入法に切り換え、神経細胞にGCaMP6fを発現させることによって、接触時に神経活動が上昇することを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
Cre-loxPシステムを用いて、ミクログリア特異的かつ時期特異的な機械受容チャネル欠損マウスを作成し、ミクログリアの形態的動態的変化を2光子イメージングによって明らかにする。これによって生じるミクログリアの機能変化が神経活動に及ぼす影響を神経細胞のカルシウムイメージングを用いて検証する。ミクログリアのカルシウムイメージングはIba1-tTA::tetO-GCaMP6の作成、ミクログリアへのカルシウム感受性蛍光タンパク質の遺伝子導入によって確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
機械受容チャネル欠損マウスのリリースが平成29年4月からであったため、その購入費として次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記機械受容チャネル欠損マウスの購入費として使用する。
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