本研究は、「老化による特定組織の機能低下を感知する組織特異的発現型マイクロRNA (miRNA)を見出すこと」と「老化により血中量の減少が見られる骨格筋特異的発現型miRNA をテストケースとして、その血中量が減少することの原因とそれにより生じる筋分化過程への影響、そして老化マウスで見られる筋再生遅延へのmiRNA 補充効果を明らかにすること」を目的としている。 昨年度までの研究から、miR-X(miR-199a-3p)がマウス損傷筋の筋再生を促進させることが示唆された。本年度は、血中および筋組織においてmiR-199a-3p発現量が減少している老齢マウス(C57B6/J)へのmiR-199a-3p mimic投与実験を行った。その結果、尾静脈注射による全身投与と前脛骨筋への局所投与のいずれの場合においても、control RNAを投与した場合と比べて、前脛骨筋における筋横断面積の増大が見られた。 また、これまでの研究から、miR-199a-3pはC2C12細胞や初代筋芽細胞に対して筋分化促進性の作用をもつことがわかっている。しかしながら、miR-199a-3pの標的遺伝子については解析が進んでいなかったため、その探索を行うこととした。バイオインフォマティクス解析によりmiR-199a-3pの標的遺伝子を予測した結果、筋分化抑制的に働くと考えられるLin28bとSuz12が標的遺伝子候補として挙がった。C2C12細胞へmiR-199a-3pを導入したところ、Lin28bおよびSuz12タンパク質量の減少が見られたことから、miR-199a-3pはこれらの遺伝子の翻訳抑制を通して筋分化の促進に寄与していることが示唆された。
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