研究課題/領域番号 |
16K19009
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
夏堀 晃世 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主席研究員 (20732837)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細胞内ATP / 睡眠 / 脳 / ファイバフォトメトリー / In vivo |
研究実績の概要 |
ATP(アデノシン3 リン酸)は様々なエネルギー源から動物の細胞内で生合成され、脳内では神経やグリア細胞の膜電位維持や物質伝達など、多くの機能にエネルギー通貨として利用される。ATPの分解産物であるアデノシンは、動物の覚醒に伴い脳内で増加し、睡眠を誘導する睡眠物質として働く。一方でATPについては、動物の睡眠―覚醒に伴いどのような細胞内レベル変動を示すか、またそれが神経やグリア細胞の活動にどのような影響を及ぼすか、明らかにされてこなかった。そのため本研究では、マウスの睡眠―覚醒に伴う脳の細胞内ATP動態を解明することを目的とした。 本年度は、細胞内ATP濃度変化を生きたマウス脳から計測するシステムを構築した。ATP蛍光プローブGO-ATeam(Nakano et al. (2011) ACS Chem Biol.) を全身細胞の細胞質に発現するノックインマウス(以下GO-ATeamマウス、未発表)を、作成者より譲渡を受けた。GO-ATeamはFRETプローブであり、mKO/GFP蛍光比をシグナルとする。そのためin vivo計測時、動物の体動によるノイズがキャンセルされSNが改善する利点をもつ。申請者が製作し使用していたカルシウム蛍光計測用のin vivo光学システム(ファイバフォトメトリー)を改変し、GO-ATeam波長対応のファイバ計測システム(1波長励起2波長蛍光計測)を構築した。動作確認実験として、GO-ATeamマウスの大脳皮質へ光ファイバを留置し、マウスへ全身麻酔薬を投与すると、ATPシグナルの低下を認めた。またマウスの大脳皮質にKClを投与すると、神経活動減少(cortical spreading depression)に伴いATPシグナルが低下した。今後はこのシステムを用い、マウスの睡眠―覚醒に伴う脳の細胞内ATP計測に着手する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構築したファイバフォトメトリーの検出感度を上回るプローブ発現を得るために、GOATeamマウス同士の交配によるホモ化が必要となり、個体作出に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
マウス脳の細胞内ATP計測を行い、睡眠―覚醒に伴う細胞内ATP動態を明らかにする。計測領域は、大脳皮質、視床下部、小脳皮質を検討している。マウスの睡眠―覚醒判定は、脳波・筋電の同時計測により行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ファイバフォトメトリー機器の改良と増設のため必要物品を発注したが、納品に時間を要し、決算が次年度になった。
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次年度使用額の使用計画 |
ファイバフォトメトリー機器の高感度化を行い、計測条件を改善したうえで引き続きマウス脳の細胞内ATP計測を行う。
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