研究課題
細菌感染から組織や臓器が障害されると敗血症が引き起こされる。多くの場合、肺微小血管内皮細胞の炎症や尿路感染症、皮膚および腸管の感染と関係しており、主な細菌としてブドウ球菌、大腸菌、連鎖球菌等が挙げられる。近年、敗血症は「感染に対する制御不能な宿主反応による生命に関わる臓器不全」と再定義され、ショックや多臓器不全への進展を回避するための治療法の開発が特に救命救急領域で求められているニーズである。疾患の進行過程で播種性血管内凝固(DIC: Disseminated Intracellular Coagulation)のが出現すると極めて予後不良となり、致死率は50%を超えるため、DIC発症の予防が重要な課題となっている。DIC発症に関与する血小板には種々の受容体が発現しているが、血小板活性化にはP2Y1受容体、凝集反応にはP2Y12受容体のP2Yサブファミリーが大きな役割を担っている。これまでに申請者は、これら2種の受容体間に相互作用があり、ヘテロ多量体が形成されることを報告した。P2Y12受容体遮断薬であるクロピドグレルは抗血小板薬として広く臨床で使われているが、敗血症の症状緩和にも効果的であることが示唆されている。本研究課題では、ヘテロ多量体を標的とした敗血症治療創薬の新たな突破口を開くため、敗血症病態におけるP2Y1-P2Y12受容体の関係について明らかにすることを目的とした。ヒト血小板の代替材料として多数の論文で使用実績があるヒト血小板前駆体巨核芽球由来培養細胞MEG-01を用いて研究を行った。本細胞において、種々の炎症刺激や、抗血小板薬であるシロスタゾール添加でこれらの受容体発現制御が見られることを発見した。またその研究過程で派生した、肺微小血管内皮細胞における炎症刺激に誘発されるシグナル伝達変化に関して論文を発表した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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