研究課題/領域番号 |
16K19029
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
松崎 京子 (有本京子) 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (90568932)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ストレス顆粒 |
研究実績の概要 |
細胞は特定のストレス刺激に応答してストレス顆粒と呼ばれる一過性の構造体を形成し、不要不急のmRNAの翻訳を停止することで、ストレス存在下での生存を図る。ストレス顆粒形成は酵母から哺乳動物に至るまで保存され、生物の基本的なストレス応答機構であると考えられる。酵母では低栄養で容易にストレス顆粒形成が観察されるのに対し、哺乳動物では生理的ストレスによるストレス顆粒形成は観察されにくく、哺乳動物細胞が日常的に暴露される生理的ストレス下でのストレス顆粒形成の意義は未だ曖昧である。 そこで本研究でははじめに、ストレス顆粒形成を促進あるいは抑制する低分子化合物の探索を行う。次に、得られた化合物を用いて、皮膚細胞におけるストレス顆粒形成の生理的意義を解析するとともに、老化によるストレス顆粒形成能への影響とその分子機構の解析を行う。 前年度までに、皮膚由来の培養細胞であるHaCaT細胞、およびがん細胞としてHeLa細胞を用いてストレス顆粒形成を制御する低分子化合物の探索を行った結果、両細胞間で得られた化合物の種類が大きく異なった。特に、HeLa細胞を用いたスクリーニングからは、ストレス顆粒形成を強く抑制する化合物が3種類同定された。 そこで今年度はそれら3種類の化合物によるストレス顆粒形成抑制の分子機構を解析し、がん細胞の抗がん剤感受性への影響を検証した。 また、老化によるストレス顆粒形成能への影響を個体レベルで検証するため、ヒト早老症を模倣したモデルノックインマウスを二系統樹立した。そのうち一系統のマウスに関して、基本的解析を行った結果、老化モデルマウスは、体重が約15%軽く、白髪、脱毛、筋肉の萎縮が早期から見られ、平均45週で死亡することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、構築した細胞アッセイ系を利用してストレス顆粒形成を制御する低分子化合物のスクリーニングを行い、いくつかの候補化合物を得た。平成29年度はそれらの化合物によるストレス顆粒形成の制御機構の解析と、その結果細胞に生じる影響について検証を行った。 本研究では、当初、得られた化合物を皮膚細胞におけるストレス顆粒形成の解析、および老化との関連の検証に利用する予定であったが、化合物スクリーニングを行った結果、ストレス顆粒形成を制御する化合物の種類は、細胞の種類によって全く異なることが明らかになった。このことから、ストレス顆粒形成の分子機構は、細胞の種類(個体においては組織の種類)によって、それぞれ異なることが予想される。これは、研究開始時には全く想定していなかった結果である。 そこで、平成29年度は、当初は予定しなかった、がん細胞におけるストレス顆粒形成制御と、抗がん剤感受性に着目した解析も行った。 また、平成29年度は、前年度から行ってきた早老症モデルマウスの作製を完成させた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、HeLa細胞を用いたスクリーニングで得られた化合物に関して、がん細胞でのストレス顆粒形成の制御と抗がん剤感受性への影響の解析を完了させる。 つぎに、樹立した二種類の老化促進マウスを用いて、ストレス顆粒形成と老化との関連を解析する。具体的には、老化促進マウスからMEFを採取し、様々なストレス刺激によるストレス顆粒形成を野生型MEFと比較する。また、老化促進マウスからケラチノサイトを単離し、紫外線、あるいはHaCaT細胞を用いたスクリーニングによって得られたストレス顆粒形成を制御する低分子化合物を用いて、ケラチノサイトにおけるストレス顆粒の形成と、老化との関係を検証する。
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