細胞間接着分子ネクチンは細胞間接着を介して組織・器官の構築と維持に寄与している。研究代表者らはこれまでに乳腺上皮組織において、管腔上皮細胞と二層目の筋上皮細胞との異種細胞間の接着に、ネクチン-1とネクチン-4が新規の細胞間接着装置を形成して機能的な乳腺上皮の構築に寄与することを見出している。本研究の目的は、乳腺におけるネクチン依存性の細胞間接着装置の役割を明らかにするとともに、乳腺以外の他の組織の構築に寄与するネクチン依存性の細胞間接着装置を探索・同定することである。前年度までに、この細胞間接着装置が妊娠時の乳腺発達に必須のプロラクチン受容体と相互作用することで、プロラクチン受容体のシグナル伝達を促進することや、その分子メカニズムとしてJAK-STAT経路をフィードバック阻害するSOCS1と、ネクチン-4が結合することでシグナル伝達を促進することを報告している。本年度は、乳腺以外でのネクチン依存性細胞間接着装置を同定する目的で、ネクチン-1とネクチン-4の発現を可視化するレポーターマウスおよびそれらの特異的抗体などを用いて解析を行ったところ、ネクチン-1が形成する新規の接着構造を見出した。この接着構造を組織特異的に欠損したコンディショナルノックアウトマウスについては既に構築しており、生体における機能解析も進めている。 従って本研究では当初の予定通り、乳腺におけるネクチン依存性接着構造の機能の解明と新たなネクチン依存性接着構造を見出したことから、研究目的の大部分を達成したと考える。
|