研究実績の概要 |
血管新生は個体の正常な発生だけでなく、癌細胞の増殖や転移、糖尿病性網膜症等、非常に多くの病態に関与する。従って、血管新生の新規分子基盤を解明する事は、新規血管新生阻害剤開発に供する。本研究において、血管新生のマスター制御因子として我々が同定しているユビキチンE3リガーゼ足場タンパク質CUL3による血管新生制御機構を「細胞内膜輸送」の観点から解析を行った。1年目までに、CUL3とそのアダブター分子ANKFY1が血管新生に必須な接着分子であるintegrin β1の細胞内から細胞膜へのリサイクルに必須である事を見出した。本年度 (2年目)では、さらに解析を進め、CUL3とANKFY1の結合及び、ANKFY1のエンドソーム局在にCUL3のNedd8化が必要である事も明らかにした (Maekawa et al., Biol. Open. 2017)。更に、本年度において本研究では、CUL3/ANKFY1依存的にユビキチン化を受ける基質タンパク質を探索するために、膜輸送関連分子群の中からANKFY1と直接結合する分子をスクリーニングした。その結果、結合タンパク質を1つ同定する事に成功した。CUL3及び、ANKFY1を発現抑制しても当該結合タンパク質の発現量は変わらないものの、その細胞内局在に変化が見られた。この結合タンパク質がCUL3/ANKFY1の基質タンパク質であるとすると、ポリユビキチン化により分解を受ける事はなく、モノユビキチン化等による機能制御と推測される。今後は、当該結合タンパク質のユビキチン化のCUL3/ANKFY1依存性を検証しつつ、大規模スクリーニングを実施し、他の結合タンパク質の同定を目指す。また、当該結合タンパク質の発現抑制及び、過剰発現によって血管新生にどのような影響が出るかも検証していく。
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