研究課題/領域番号 |
16K19041
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
佐々木 和教 横浜市立大学, 医学部, 助教 (50438131)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / 発生・分化 / 細胞・組織 / 細胞極性 / がん / 幹前駆細胞 |
研究実績の概要 |
上皮管腔組織は、組織幹細胞の増殖と分化で産生される上皮細胞が極性化し、形態形成を進める事で構築される。この仕組みの異常は、がんや発生不全等の病態につながると考えられる。本研究の目的は、マウス乳腺上皮組織を幹細胞解析系のモデルとし、細胞極性タンパクaPKC (atypical protein kinase C)が乳腺幹及び前駆細胞の増殖や分化をどのように調節するかを解明することである。そのために本研究では、乳腺初代培養細胞を用いたマンモスフィアアッセイ、3次元オルガノイドアッセイといった幹前駆細胞の評価系と、各マーカー抗体による免疫染色を組合せて、増殖、分化等の種々の観点から幹前駆細胞機能を評価する事とした。そして、レンチウイルスshRNAや阻害剤により、マウス乳腺初代培養細胞のaPKC機能を抑制し、その効果をこれらアッセイ系で調べた。その結果、aPKCの機能は乳腺組織幹細胞と管腔前駆細胞で異なることが分かった。さらに、乳腺組織幹細胞における分子メカニズムに迫るため、aPKCが幹細胞関連因子をリン酸化する可能性を検討し、その候補となる分子を見出した。乳腺組織幹細胞分画の3次元オルガノイドアッセイから、候補分子のノックダウンは、aPKCのノックダウンと同様な表現型を示した。これらの結果から、aPKCが候補分子をリン酸化し、乳腺組織幹細胞機能に関与する可能性が示唆された。aPKCと候補分子の関連をより詳細に調べるため、候補分子の野生型とリン酸化変異体を用いた解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乳腺幹細胞分画及び管腔前駆細胞分画を表面抗原マーカーとセルソーターを用いて分取する方法、幹前駆細胞機能を評価する系の培養条件、といった計画遂行に必要な実験系の諸条件を実情に即して決定した。次に、タイターの高いレンチウイルス発現系の作製法、初代培養細胞への効率的な感染条件等も決定し、乳腺幹細胞又は管腔前駆細胞における遺伝子操作を可能にした。これらの実験系を用いて、乳腺幹細胞及び管腔前駆細胞での実際の解析を進め、成果を得た。さらには、aPKCのキナーゼターゲットの候補も見出した。以上より、おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
in vitro培養系を用いた解析から、乳腺幹細胞又は管腔前駆細胞におけるaPKCの機能が分かってきた。今後は、aPKCのキナーゼターゲット候補の詳細な解析を生化学的、分子細胞生物学的に行うとともに、移植によるin vivoでの乳腺幹細胞機能の評価を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、購入したFVB/Njcl系統マウスの乳腺から微量な乳腺幹細胞分画をセルソーターで分取し、専用の培地で培養する。本年度は、一回の単位実験当たりに使用するマウスの数や高額な専用培地の量が当初の想定よりも少なくて済んだ。また、ノックダウンの表現型がaPKCとキナーゼターゲット候補因子で似通っており、発現変動が共通する遺伝子の存在が予想された。マイクロアレイなどの網羅的解析を外注することを計画し、その費用に充てる分を計上した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には、遺伝子発現の網羅的な解析(外注)、乳腺初代培養細胞の移植によるin vivo解析などを計画している。また、生化学的、分子細胞生物学的解析のために、抗体や細胞培養などの試薬や実験器具を購入する。成果を発表するため、学会への参加を予定している。
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