研究課題/領域番号 |
16K19052
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
木村 竜一朗 徳島大学, 先端酵素学研究所(プロテオ), 特任助教 (20587323)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 乳癌 / ゲノム / シグナル伝達 / プロテオーム / 発現制御 |
研究実績の概要 |
エストロゲンレセプター(ER)陰性乳癌、特にトリプルネガティブ乳癌(TNBC)は生物学的悪性度が高く予後不良であり、効果的な治療法のないことが大きな問題となっている。癌特異的分子BIG3は、ER陽性乳癌においてERの標的遺伝子として発現亢進しており、ER活性化抑制因子PHB2の抑制機能を阻害することでER陽性乳癌の細胞増殖を促進することが知られている。一方で、ER陰性乳癌症例においてもBIG3の発現亢進が認められること、BIG3発現と予後の相関があること、BIG3の発現抑制により細胞増殖が阻害されることが見出されているが、ER陰性乳癌、特にTNBCにおけるBIG3の作用機序は不明である。そこで本研究では、ER陰性乳癌発症・進展におけるBIG3の未知の機能を明らかにする目的で、ヒトER陰性乳癌細胞株におけるBIG3相互作用因子の網羅的探索をショットガンプロテオミクス(2DICAL法)で試みた。その結果、BIG3と同様に細胞質に局在し癌発症・進展において多彩な役割を果たす多数の新規BIG3相互作用因子候補群が見出されたが、これらのいくつかの因子は微小管構造の維持・制御に関わる重要な因子であることが分かった。BIG3とこれらの因子との相互作用を免疫沈降実験で確認したところ、HEK293T細胞を用いた強制発現系、およびヒトER陰性乳癌細胞株内の内在性BIG3-目的因子結合の双方で相互作用が検出された。同時に、BIG3は免疫染色実験でもこれらの因子との細胞内共局在が示唆された。一方、ヒトER陰性乳癌細胞株内でBIG3をノックダウンすると、細胞周期制御因子の顕著な発現抑制も観察された。これらのことから、BIG3は微小管制御因子との結合、あるいは細胞周期制御因子の発現制御を介して、ER陰性乳癌細胞の生存・増殖に関与する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究実施1年目では、ER陰性乳癌発症・進展におけるBIG3の機能を明らかにする目的で、ヒトER陰性乳癌細胞株内においてBIG3相互作用因子の網羅的探索を行い、癌発症・進展において重要な役割を果たすと考えられる多数の新規BIG3相互作用因子候補群を同定した。これらのいくつかの因子は微小管構造の維持・制御に関わる重要なものであり、その後の免疫沈降実験と免疫染色実験により、ヒトER陰性乳癌細胞内でBIG3とこれらの因子との相互作用と細胞内共局在が内在性レベルで検出されている。一方、BIG3は細胞周期制御因子の発現制御にも関与していることが示唆された。これらのことから、BIG3は微小管制御因子との結合、あるいは細胞周期制御因子の発現制御を介して、ER陰性乳癌細胞の生存・増殖に関与する可能性が示唆された点で意義があると考えられる。ただし、当初の計画では、BIG3と新規相互作用の結合領域を詳細に同定することや、BIG3が新規相互作用因子の機能にどのように関与するか明らかにすることを予定していた。特に、BIG3が微小管制御因子依存的な細胞骨格維持、細胞分裂制御機構にどのように関与するか、このことが乳癌細胞の生存・増殖にどのように影響するか、その分子機序を解明することは今後の大きな課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、特に、BIG3が微小管制御因子依存的な細胞骨格維持や細胞分裂制御機構にどのように関与するかその分子機構を明らかにすることに重点を置いて研究を進めていく。このため、BIG3とこれら微小管制御因子の結合領域の詳細な同定を進めることにより、これらの因子の有するどの機能にBIG3が関与するか予想していく。最終的にBIG3が微小管制御因子依存的な細胞骨格維持や細胞分裂制御機構にどのように関与するか、BIG3ノックダウン等の手法を用いて、ヒトER陰性乳癌細胞の細胞分裂、細胞周期、細胞増殖などの観点で詳細に解明していく予定としている。一方で、ER陰性乳癌の中でもHER2陽性乳癌では、BIG3が顕著に高発現していることが知られている。また、これらのヒト細胞株でもBIG3をノックダウンすると細胞増殖が抑制されること、先に見出された微小管制御因子とBIG3の細胞内相互作用が確認できることが分かった。今後は、これらのHER2陽性乳癌におけるBIG3の微小管制御因子依存的な細胞の生存・増殖機構にも着目して研究を進める予定している。
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