研究課題/領域番号 |
16K19054
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
曽我 美南 熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (80768002)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 疾患由来iPS細胞 / ニーマンピック病C型(NPC) / コレステロール / ライソゾーム病 / 代謝性疾患 / 神経障害 / 肝脾腫 / シクロデキストリン |
研究実績の概要 |
本研究は、申請者が新たに見出したニーマンピック病C型(NPC)の新規治療薬候補物質HPGCDの分子レベルでの作用機序を解明し、標的分子をターゲットとした新薬開発、そして神経障害に効果的なHPGCD投薬法を開発することを目的としている。NPCはNPC1の変異によって発症する代謝性疾患で、コレステロール輸送が障害され、細胞内にフリーコレステロールや糖脂質が蓄積する。神経障害や肝脾腫を呈し、多くの患者が10代で死亡する予後不良な進行性疾患である。根本的な治療法は確立されておらず対処療法のみであり、また既存薬の効果は限られており副作用の問題があることから、新しい治療薬の開発はNPC の優先すべき課題である。 本年度はHPGCDの作用機序解明を目指し、健常者とNPC患者由来のiPS細胞から神経前駆細胞を分化誘導し、未処理とHPGCD処理を行いDNAマイクロアレイ解析のサンプルを調整した。神経前駆細胞のマーカーであるPSA-NCAM抗体による細胞単離を行うことで、より純度の高い神経前駆細胞を得ることが出来た。 また、神経障害に効果的な投薬法開発を目指し、HPGCDの単回と複数回の脳室内投与を行った。皮下投与では肝障害は改善されるものの神経障害は抑えることが出来ず、生存期間も10日程しか延長しない。本研究で行った脳室内投与は、生後7日のマウスへの単回の投与で平均52.5日、3週おきの複数回の投与で平均164.9日生存期間を延長した。また行動解析試験により、神経症状の発症も遅延することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初Nestin陽性の神経前駆細胞をDNAマイクロアレイ解析のサンプルとして実験に使用していたが、Nestinは神経幹細胞のマーカーであり広く発現しているため、遺伝子発現にばらつきがあり、神経前駆細胞の純度を高めるのに不十分であることが明らかとなった。現在神経前駆細胞マーカーであるPSA-CAM陽性の細胞を単離することにより、純度の高い神経前駆細胞でアレイ解析を行う準備が整い、次年度でアレイ解析を用いた標的分子の探索を進める予定である。 神経障害に効果的なHPGCD投薬法の開発については、単回または3週毎の脳室内投与はおおむね順調に進んでいるが、2週毎に投与したマウスの実験が熊本地震による動物実験施設への立ち入り禁止の為中止せざるを得なくなり、現在再実験を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、純度の高い神経前駆細胞を用いたDNAマイクロアレイ解析を行い、標的分子の同定、さらにこれをターゲットとして作用する新規薬剤候補物質を探索する。 神経障害に効果的なHPGCD投薬法開発は、2週毎の脳室内投与による効果解析、また脳室内投与と皮下投与との併用を行い、脳室内投与単独と比較してその効果を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度にDNAアレイ解析を行う予定だったが、使用サンプルの調整に工夫が必要になったため、アレイ解析を終えることが出来ず、未使用額が生じた。 マウスの実験が地震の為やむを得ず中断することになり、計画を変更し実験を遅らすことになったため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度進めることが出来なかったアレイ解析と動物実験を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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