研究課題
ABC輸送体はこれまで薬剤排出輸送体として癌治療抵抗性との関連が主に報告されている。申請者は「ABC輸送体C11(ABCC11)発現を有する乳癌の予後が不良であること」を報告してきたが、その機序についてはいまだ明らかになっていない。一方、新規脂質メディエ―ターであるスフィンゴシン1リン酸(S1P)は、細胞内での生成・細胞内から外への排出・受容体への結合を経て細胞増殖・浸潤や免疫細胞や脈管細胞の遊走に寄与する。申請者らは「S1Pが乳癌微小環境形成に寄与していること、炎症性サイトカインのフィードバックを引き起こすこと」などを解明してきた。本研究では、乳癌におけるABC輸送体によるS1Pの排出に注目し、「S1Pは細胞内で生成されるだけではその作用は十分に発揮されず、細胞外に汲みだされたS1Pによって腫瘍自身の増殖が促進され、また癌の微小環境が整えられることで乳癌の発育が促進される」という仮説を立て、本研究を企画した。平成30年度は,平成28,29年度の研究結果をまとめ,ABC輸送体がS1P排出を介して微小環境を整えて乳癌の予後を悪くすることを,科学論文で報告した.また並行して行っていたS1Pの代謝サイクルと肥満・慢性炎症に関する研究が科学論文に掲載された。新規S1P輸送体であるABCC11に関してヒト乳癌検体における発現解析を行い,ABCC1で見られたS1Pとの関連性が確認できた.新たに乳癌幹細胞との関連性に着目しS1Pとの関連性についての免疫組織学的解析を行ったが,ABCC11とS1P,乳癌幹細胞に関する研究は現在まで継続して行っている.並行して行ってきた乳癌幹細胞の発現制御に関する研究を科学論文で報告した.
すべて 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
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