研究課題
若手研究(B)
ABC輸送体過剰細胞乳癌細胞を用いた細胞実験およびマウスへの同種/異種移植モデルを用いて,脂質メディエ―ターであるスフィンゴシン1リン酸(S1P)がABC輸送体によって汲み出されることで乳癌の発育を促進し,微小環境,特に血管・リンパ管新生を促進させていることを立証した.またヒト乳癌においてもS1P生成酵素とABC輸送体が共発現する乳癌の予後が不良となることを明らかにした.S1Pがヒト乳癌において微小環境に影響を与えて乳癌の増悪に関わっており,S1Pは乳癌治療の標的となりうることが示唆された.
医歯薬学
本研究によって、脂質シグナル伝達物質S1Pが生成/排出のサイクルを介して乳癌微小環境に作用し乳癌の増悪に関与していることが示された.現在S1Pシグナルを標的とした治療薬として、S1P受容体修飾薬が,本邦では未承認であるが海外では免疫修飾薬として多発性硬化症に投与されており,潰瘍性大腸炎・関節リウマチなどに対する臨床試験が行われている.今後,S1Pシグナル標的治療が癌治療へ応用される可能性があり,本研究がその一助となることが期待される.