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2016 年度 実施状況報告書

オートファジーによるtau病理の形成と伝播‐そのメカニズムと意義の解明‐

研究課題

研究課題/領域番号 16K19057
研究機関大阪市立大学

研究代表者

梅田 知宙  大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (70549790)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードオートファジー / tau / 伝播
研究実績の概要

研究代表者は、「分泌性オートファジー」という新たな機構を提唱し、これが神経変性疾患での異常タンパク質の細胞内蓄積と細胞間伝播の関係に寄与するものと考え、初年度の本研究では、1.NFT細胞モデル及び2.tau病理伝播マウスモデルの作製を目指した。

1.培養細胞系でヒトtauの分泌を確認するため、COS7細胞にヒトtauを遺伝子導入した。その培養上清から分泌tauを検出した。さらに、オートファジーのtau除去に寄与するGSK-3βの共発現が、その分泌を促進した。この結果は、tauが通常条件で細胞外へ分泌され、GSK-3βの制御するオートファジーが分泌による標的分子の除去に寄与することを示唆する。これを踏まえ、オートファジー欠損細胞に対し同様にヒトtauの遺伝子導入を行い、tauの分泌障害と、凝集tauの細胞内蓄積を確認し、NFT細胞モデルとして利用したい。

2.著者の作製した野生型ヒトtau発現モデルtau264マウスを用い、AD脳抽出物注入による病理伝播モデルの確立を試みた。注入後1ヶ月、2ヶ月において脳切片を作成し、tau病理について評価を行った。その結果、海馬苔状線維で異常リン酸化tauを検出し、歯状回顆粒細胞層にGallyas銀染陽性となるリン酸化tau蓄積細胞を観察したが、主たるtau病理であるNFTの典型的形態は認められなかった。これを踏まえ、現在、注入後6カ月での病理解析を行うためのマウスを飼育中である。同時に、著者の作製したtauopathyモデルtau609マウスを用いてオートファジー因子を解析したところ、凝集tauの細胞内蓄積と共に、p62蓄積とオートファジーの異常亢進が検出された。そこで、著者の発見した凝集阻害薬rifampicinを投与すると、tauとp62蓄積がともに消失した。NFT形成細胞でオートファジーによるtauの除去が滞っていることを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

通常の培養条件でヒトtauが細胞外に分泌されることが確認された。さらに、このtau分泌にはGSK-3βによるtauのリン酸化とオートファジーが寄与することが確認された。以上より、オートファジー欠損細胞の使用によりtauの分泌障害と細胞内蓄積が再現できる可能性が高いと考えている。NFT細胞モデルの作製はおおむね順調である。

Tau264マウスへのAD脳抽出物注入によるNFT形成の誘導は確認できなかった。Tau病理伝播モデルの作製が1~2カ月のタイムコースでは不可能であることが明らかとなった。その一方で、tauopathyモデルtau609マウスにおいてオートファジーがtau病理の形成に寄与することが明らかとなった。Tau609マウスにおける脳内tau病理の伝播解析によって、オートファジーの寄与が明らかになるかもしれない。

今後の研究の推進方策

オートファジー欠損細胞に対しヒトtauの遺伝子導入を行い、tauの分泌障害と細胞内蓄積、およびtauフィブリルの形成を確認し、NFT細胞モデルを作製する。このNFT細胞モデルにおいてsiRNAでp62発現をノックダウンし、tau フィブリルの減少と、tau オリゴマーの増加を観察し、p62によるtauのフィブリル形成を明らかにしたい。さらに、NFT細胞モデルの欠損しているオートファジー因子を遺伝子導入によって補完することで、オートファジーとtau分泌が共に回復することを確認し、オートファジーによるtau分泌を明らかにしたい。

Tau264マウスにAD脳抽出物注入を行い、初年度よりも長期の6カ月間待つことで、tau病理伝播モデルを作製する。現在すでに飼育中であり、6カ月の後に、認知機能障害と脳内に誘導されるtau病理を解析する。同時に、tauopathyモデルであるtau609マウスおよびP301Sマウスに対してもAD脳抽出物の注入を行い、tau病理伝播モデルとして使用できる可能性を検討する。上記いずれかのモデルマウスのうちで注入によってNFT形成が確認されたものを用いて、オートファジー欠損マウスとの掛け合わせを行い、分泌性オートファジーが病理伝播に必要である可能性を評価する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Rifampicin is a candidate preventive medicine against amyloid-β and tau oligomers2016

    • 著者名/発表者名
      Tomohiro Umeda, Kenjiro Ono, Ayumi Sakai, Minato Yamashita, Mineyuki Mizuguchi, William L. Klein, Masahito Yamada, Hiroshi Mori, Takami Tomiyama
    • 雑誌名

      Brain

      巻: 139 ページ: 1568-1586

    • DOI

      https://doi.org/10.1093/brain/aww042

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 既存医薬品リファンピシンはオリゴマーを標的とする認知症予防薬の有望な候補である2016

    • 著者名/発表者名
      梅田知宙, 小野賢二郎, 酒井亜由美, 山下港, 水口峰之, 山田正仁, 森啓, 富山貴美
    • 学会等名
      第35回 日本認知症学会 学術集会
    • 発表場所
      東京国際フォーラム(東京都千代田区)
    • 年月日
      2016-12-01 – 2016-12-03

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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