研究代表者は、オートファジーの新たな側面としてこれが神経変性疾患での病理の形成・伝播に寄与するものと考え、3年目の本年度は、1.Tau凝集細胞モデルの作製によるtau凝集へのp62関与の検証 および、2.オートファジー回復薬による認知症予防効果の検証 を行った。 1.培養細胞系でtau凝集を再現するため、COS7細胞にヒトtauの野生型およびV337M変異を遺伝子導入した。細胞染色により野生型tau発現細胞での微小管結合tauの正常な細胞骨格ネットワークを確認した。一方変異tau発現細胞では細胞骨格ネットワークが消失し、代わりにdot-like tauが観察された。生化学解析によりこれらdot-like tauが不溶性であることを確認した。この結果は、変異tauが細胞質中で不溶性凝集体として蓄積していることを示唆する。さらにp62との共染色で、dot-like tauにp62が共局在していることを見出し、生化学解析ではtauの不溶性凝集に一致して細胞質画分の可溶性p62が不溶性画分へと移行したことを観察した。これらの結果は、p62がtau凝集に寄与することを示している。 2.著者らの発見した既存医薬品rifampicinによるオートファジー回復薬効は、様々な毒性分子の関わる各種の認知症原因疾患に対し、幅広く予防的薬効を有するものと期待される。そこでこのrifampicinの適応拡大による臨床応用に向けて、認知症モデルマウスを用いた検証を行った。鼻腔内への投与によって、経口投与よりも脳内到達量を増加させつつ、肝臓での初回通過効果を回避することでrifampicinの副作用である肝毒性を低下し、長期投与を可能にした。この際rifampicnはモデルマウスの脳内病理を減少させ、認知機能を回復させた。これはdrug-repositioningの有用性を示すものである。
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