研究実績の概要 |
高脂肪高コレステロール食(High fat high cholesterol diet, HFHCD)またはメチオニンとコリンの不足した高脂肪食(A choline-deficient, L-amino acid-defined high fat diet, CDAHFD)を給餌することによるNASHモデル系を用い、Bcl6とNASH発症との関連性を検証した。 肝臓特異的Bcl6欠損マウス(Bcl6 liver specific knock out, Bcl6 LKO)を作出した。Bcl6 LKOマウス肝臓の網羅的遺伝子発現解析から、Bcl6は肝臓の遺伝子発現パターンの性差の維持に重要であることが明らかとなった。Bcl6 LKOマウスは血中性ホルモン濃度や生殖能力はオス、メスともに野生型と同等であり、全身の性差は維持されていた。 Bcl6 LKOマウスに実験食を負荷した結果、野生型に比べてBcl6 LKOマウスでは肝臓での脂質の蓄積、肝炎症が抑制されていた。また、Bcl6 LKOマウス肝臓において、脂肪酸の不飽和化および伸長を担う酵素であるScd1およびElovl3の遺伝子発現量が有意に発現低下していた。Bcl6 LKOマウス肝臓の脂肪酸プロファイルを測定した結果、Bcl6 LKOマウス肝臓では多くの不飽和脂肪酸量が低下していた。現在CDAHFD長期(38週間)給餌した条件での肝臓の解析を進めており、Bcl6と脂質蓄積に起因する肝発ガンとの関連性も明らかにしたいと考えている。以上の結果から、Bcl6 LKOマウスではNASH発症が抑制されており、この時性ホルモン濃度に変化はなく、脂肪酸代謝系の変化を伴うことが示唆された。
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