研究課題/領域番号 |
16K19062
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
石澤 通康 日本大学, 医学部, 助手 (30646542)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ビタミンD / 胆汁酸 / 核内受容体 / 肥満 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、肥満病態における胆汁酸代謝と腸内細菌の関係性に対する、ビタミンD受容体(VDR)の役割を明らかにすることを目的とし、平成26年度採択の若手(B)研究(課題番号26860222)に基づき、肥満病態の胆汁酸代謝に対するVDRの関与について研究を進めた。平成28年度はオス野生型マウス、VDR欠損マウスに高脂肪食(HFD32)を4週間自由摂取させ、肥満病態モデルの実験系確立を行った。VDR欠損マウスの血中パラメーターは野生型マウスと類似した肥満病態を示すものの、体重が増加しなかった。野生型、VDR欠損いずれにおいても糞中総胆汁酸量、非抱合型胆汁酸デオキシコール酸、リトコール酸、ムリコール酸類の増加を認め、VDR欠損マウスでは、血中タウリン型コール酸量が増加したが、HFD32によって野生型マウスと同程度まで減少した。尿中及び肝臓中のHFD32依存性変化は、VDR欠損マウスでは認められなかった。 平成29年度は、肝臓及び腸管における胆汁酸代謝関連遺伝子群の解析を行った。肝臓胆汁酸合成酵素遺伝子CYP7A1 、CYP8B1、CYP27A1 mRNA発現はVDR欠損マウスで増加した。HFD32はCYP7A1 mRNA発現は維持したが、VDR欠損によるCYP8B1、CYP27A1 mRNA発現増加は抑制した。野生型マウス、VDR欠損マウスいずれも、HFD32は回腸の胆汁酸合成抑制分子FGF15 mRNA発現を増加させた。VDR欠損マウス肝臓における血中胆汁酸組成変化は、CYP7A1過剰発現による胆汁酸生合成系classical pathwayが惹起され、コール酸を相対的に過剰産生したためと考えられる。HFD32によって糞中二次胆汁酸デオキシコール酸、リトコール酸とムリコール酸類が増加したため、腸内細菌の量的、質的酵素活性変化が考えられるが、VDRの大きな関与は認められなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度研究実施計画では、平成28年度計画の胆汁酸組成解析により、高脂肪食摂取で認められる変化の中でVDR依存性変化が認められた場合、腸内細菌の関与を検討するために抗生剤投与実験に進む予定であった。①高脂肪食摂取は血中、肝臓中、尿中胆汁酸量を減少させた。②血中胆汁酸組成はVDR欠損マウスで変化するが、高脂肪食摂取で野生型と類似したレベルに戻った。③肝臓及び回腸における胆汁酸合成制御系遺伝子発現も胆汁酸量と矛盾のない発現パターンを示したことより、血中、肝臓中、尿中胆汁酸の量的質的変化へのVDRの関与は、高脂肪食の影響でマスクされる弱い影響と考えられた。一方、④糞中胆汁酸量、胆汁酸組成は高脂肪食摂取で増加したが、VDR依存性の変動は大きなものではなかった。①から④の結果より、当初の予定と異なり、4週間の高脂肪食摂取では、VDR欠損による血中胆汁酸組成差異、高脂肪食依存性の糞中胆汁酸組成変化は確認できるものの、高脂肪食による胆汁酸組成変動にVDR依存性の変化は確認できなかった。抗生剤投与実験は、野生型マウスにおける2週間自由飲水による実験系の確認に留まった。一方、組織選択的なビタミンD誘導体の開発は順調に進み、細胞選択的活性を有する25位修飾型ビタミンD誘導体の生物活性評価については論文投稿中である。これらを総合し、28年度実施計画では到達できなかった遺伝子解析は実施できたものの、抗生剤投与実験の着手に至らなかったことから、計画はやや遅れていると自己評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
方策1、最長で8週間高脂肪食を摂取させ、野生型マウス及びVDR欠損マウス血漿、肝臓、尿、胆汁、糞中胆汁酸組成解析を行う。 方策2、糞中胆汁酸組成変化を評価すると同時に、糞中腸内細菌の機能的指標として、二次胆汁酸合成酵素活性及び、脱抱合化酵素活性をDNA量及び酵素活性にて評価し、糞中腸内細菌の質的変化に高脂肪食及びVDRが関与するかどうかを検討する。 方策3、肝臓、腸管に加え、脂肪組織における脂質代謝関連分子群の発現変化を評価し、VDR依存性に変化する分子の有無を調べる。 方策4、平成29年度実施計画で達成できなかった抗生剤投与によって腸内細菌を除菌する実験系を確立する。胆汁酸組成変化にVDR依存性が認められた場合、腸内細菌が関わるかどうかを抗生剤投与、非投与群で比較する。腸内細菌の関与が確認できた場合、盲腸内容物或いは糞中の腸内細菌組成を評価する。
|