研究課題
STINGリガンド(cGAMP)の腫瘍内投与によって腫瘍内に集積してくるマクロファージをディフクイック染色によって形態学的に解析したところ、マクロファージによく見られる食胞が認められた。また、セルソーターによって単離したマクロファージからRNAを抽出し、抗腫瘍免疫応答に関与する分子の遺伝子発現を解析した結果、IFNb1、Nos2、Cxcl10などの遺伝子が腫瘍関連マクロファージに比べて高発現していることが確認されたことから、こう腫瘍免疫応答に対してプラスに働いていることが示唆された。また、細胞内染色法によってSTINGリガンドによって集積してきたマクロファージの産生サイトカインを解析した結果、TNF-alphaを産生していることを確認した。マクロファージが腫瘍内に集積するメカニズムを明らかにするために、集積したマクロファージに発現されているケモカインレセプターを調べた結果、CCR2及びCCR20を発現していることを確認した。また、cGAMP投与によってそれぞれのケモカイン遺伝子の発現上昇が認められた。しかし、CCL2及びCCL20に対する中和抗体ではマクロファージの腫瘍内浸潤を抑制することができなかったことから、これらのケモカインは関与していないことが明らかになった。そこで、腫瘍内集積マクロファージ内で活性化しているシグナル経路を探るために、網羅的遺伝子解析をした結果、コントロールの腫瘍内マクロファージと比較してTLR4/IRF5のシグナル経路が強く活性化されていることが示唆された。実際にTLR4に対するアンタゴニストをcGAMPと同時に投与することによって、マクロファージの腫瘍内集積が抑制されたことから、STING刺激によって産生される何らかのTLR4リガンドがマクロファージの腫瘍内集積に関与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度に実施する予定であった解析のほとんどが既に終了し、平成29年度に実施予定である解析に進んでいる。
cGAMPによるマクロファージの腫瘍内集積にTLR4が関与していることが明らかになったことから、マクロファージの表面上のTLR4が重要なのかを明らかにするためにTLR4KOマウス由来の骨髄を用いてキメラマウスを作成し、cGAMP投与後の腫瘍内にTLR4KO-マクロファージが集積するか確認する。また、様々なTLR4リガンドが知られているが、マクロファージの腫瘍内集積に関与するTLR4リガンドを明らかにするために、in vitroにおけるマクロファージの遊走実験モデルを構築し、siRNAで各TLR4リガンドの遺伝子をノックダウンした細胞株を用いて検討する。この検討で明らかになったTLR4リガンドについて、がん患者病理組織材料を用いて免疫染色法を用いて、その発現頻度とマクロファージの浸潤頻度及び患者生命予後について解析する。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
Cancer Immunology, Immunotherapy
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10.1007/s00262-017-1975-1.