研究課題
本研究では、stimulator of interferon genes (STING)のアゴニストである2’3’-cGAMPを用いたtype I IFN産生の誘導と、COX-2選択的阻害薬であるcelecoxibによる免疫抑制細胞の不活化の効果を組み合わせることにより、効果的で簡便な抗腫瘍効果をもたらす治療方法の開発とその機序解明を目的とした。はじめに、乳がん細胞株4T1細胞を移植した担癌マウスモデルにおいて、併用療法により抗腫瘍効果が得られる投与量およびスケジュールの最適化を行った。移植した腫瘍の増殖抑制効果を指標として検討を重ねた結果、無治療群および各単独治療群と比べ、併用治療群でより高い腫瘍増殖の抑制能を誘導する治療条件を見出した。4T1細胞モデルで確立した併用治療条件を用いて、大腸がん細胞株CT26細胞を移植したマウスモデルで検討したところ、無治療群と比べて各単独治療群においても高い抗腫瘍効果が見られたことより、細胞株間で治療に対する感受性に違いがあることが示唆された。決定した条件を用いて治療を行い、腫瘍に浸潤したリンパ球の割合や表現型の変化をフローサイトメトリーを用いて解析したところ、他治療群と比べて併用治療群においてT細胞やMDSC(骨髄由来抑制細胞)の割合や表現型に目立った変化は見られなかった。そこで、併用療法による抗腫瘍免疫に関与する細胞群の同定を行うため、CD8陽性T細胞またはNK細胞を除去したマウスを用いて併用治療を行ったところ、どちらの細胞群も抗腫瘍効果には関与していないことが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
4T1細胞移植モデルを用いて2’3’-cGAMPとcelecoxibによる効果的な抗腫瘍効果を誘導する治療条件を最適化し、CT26細胞移植モデルにおいてもその効果を検討した。また、併用療法によるTAM (腫瘍関連マクロファージ)やMDSC(骨髄由来抑制細胞)の表現型および機能変化の解析を行ったが、変化を同定することが出来なかった。そこで、次年度に予定していた抗腫瘍免疫に関与する細胞群の同定を先に行い、併用療法による抗腫瘍効果にCD8陽性T細胞およびNK細胞は関与していないことを明らかにした。この結果をもとにさらなる検討を行い、エフェクター細胞を同定した後に、腫瘍内浸潤リンパ球を解析するタイミングや指標とする分子を決定して再度検討するため、全体的な遅れはないと考えられる。
はじめに、併用療法による抗腫瘍効果に関与する細胞群の同定を行う。これまでの研究結果より、その担当細胞としてマクロファージの関与が示唆されるため、クロドロネート投与によりマクロファージを除去したマウスを用いて併用療法を行い、抗腫瘍効果を検討する。エフェクター細胞群を同定した後に、腫瘍内浸潤リンパ球の表現型や機能解析、腫瘍の組織学的な解析(HE染色や免疫染色)を行い、併用療法による抗腫瘍免疫誘導の作用機序の解明を行う。また、マウスモデルにおいて併用療法による抗腫瘍効果の作用機序を明らかにした後に、ヒト臨床組織検体を用いて併用療法の効果について検討を行う。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
Cancer Immunology, Immunotherapy
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10.1007/s00262-017-1975-1