最終的に2001年から2015年までに名古屋大学医学部附属病院で原発病変を切除された脱分化型脂肪肉腫の29症例に、2007年から2010年の間に同病院で原発巣切除された高分化型脂肪肉腫のうち切除後5年以上観察期間のある5症例、2007年から2009年までの間に九州大学病院で原発巣切除された脱分化型脂肪肉腫3症例を加えた全37症例において、カスタムアレイによるアレイCGHを実施した(2017年度までに実施済みの25症例を含む)。解析では、まずamplification (log2 ratio>2)の見られた遺伝子を各症例ごとに抽出し、遠隔転移をきたし原病死あるいは原病による終末期状態で観察を終了した予後不良群8例と、腫瘍切除後5年以上再発・転移のなかった予後良好群14例を設定し、それぞれの群で増幅のみられる頻度が高かった遺伝子を抽出した。その後、抽出した遺伝子について、予後不良群と予後良好群の両方で増幅のみられた割合を調べ、その差が大きいものをリストアップした。その中から増幅頻度の高い遺伝子であるMDM2とHMGA2を選び、全症例で相対的なコピー数を調べて解析したところ、MDM2/HMGA2比が全生存率と有意に関連していた。また予後不良群では、予後良好群と比較して増幅のみられた遺伝子数が有意に多く、染色体異常の複雑性が予後不良因子である可能性が示された。また同時に施行した臨床病理学的解析では、組織学的悪性度、細胞異型、MDM2の免疫染色態度が全生存率と関連していた。一方、免疫染色上の筋性分化と予後との関連は認められなかった。
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