研究課題
mRNAレベルおよびタンパク質レベルでのKIR2DL4の発現が確認されたヒトランゲルハンス細胞組織球症(LCH)細胞株ELD-1において、KIR2DL4の機能を検討した。抗KIR2DL4抗体によりLCH細胞株であるELD-1の細胞増殖が抑制された。一方でKIR2DL4のタンパク質レベルでの発現が確認されなかったLCH細胞株PRU-1では、細胞増殖は確認されなかった。この細胞増殖の抑制にはERKの活性が関与するのではないかと考え、MAP2K1阻害剤またはERK阻害剤とともにELD-1を培養すると細胞増殖が抑制された。KIR2DL4をノックダウンしたELD-1ではKIR2DL4の刺激で細胞増殖に変化はみられなかった。ERKがELD-1の増殖に関与することから、KIR2DL4作動性抗体によるERKのリン酸化の変化を調べると、KIR2DL4作動性抗体はELD-1のERKのリン酸化を抑えることを確認した。KIR2DL4が発現するマスト細胞、NK細胞ではSHP-1やSHP-2の活性が確認されるが、ELD-1ではSHP-2のリン酸化活性のみが確認された。KIR2DL4の刺激によりSHP-2のリン酸化がおこりERKのリン酸化が抑制され、SHP-2リン酸化阻害剤とともにKIR2DL4を刺激するとERKのリン酸化の抑制がキャンセルされることを確認した。KIR2DL4がLCHの診断に重要なマーカーになると考えられる。一方でKIR2DL4の発現みられないLCHがあり、KIR2DL4発現の有無と症例の差異を今後検討する必要がある。またLCH細胞株においてSHP-2やERKのリン酸化されていることを明らかにした。今後生体内でSHP-2がLCH細胞において連続的にリン酸化される機構を明らかにすることで、抗KIR2DL4アゴニスト抗体がLCH治療ツールになり得ると考えられる。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Oncotarget
巻: 8 ページ: 36964-36972
10.18632/oncotarget.16936.