研究課題/領域番号 |
16K19082
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
坂部 友彦 鳥取大学, 医学部, 助教 (50639747)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | solid component / micropapillary component / オルガノイド |
研究実績の概要 |
本研究は、肺腺癌内に混在する組織亜型のヒストン修飾を解析することで、組織亜型ごとのヒストン修飾パターンの違いを明らかにして、組織亜型の形成メカニズムを解明し、予後不良なhigh grade亜型 (micropapillary, solid)を標的とした新規治療法開発を行うことを目的としている。 平成29年度は、各亜型におけるヒストン修飾パターンを検出する為に、肺腺癌病理標本を用いたイメージング質量分析を実施した。具体的には、浸潤性肺腺癌のホルマリン固定パラフィン包埋標本より組織切片 (10 μm)を作製し、ITOコートスライドガラスに貼り付けた。作製したサンプルは、脱パラ、水和後にマトリックスとしてsuper 2,5-dihydroxybenzoic acid (sDHB)を噴霧し、rapifleX MALDI Tissuetyperによる測定を行った。しかし、今回のサンプル前処理、測定条件では、目的としたヒストンタンパクや他のタンパクのピークを検出することは出来なかった。今後は、タンパクのメチレン架橋を解離させる賦活化処理やトリプシンによる酵素処理など、サンプル前処理における条件の最適化をする必要があると考えている。また、組織亜型形成におけるより詳細な検証を行う為の組織亜型評価モデルとして、in vitro肺腺癌発癌モデルの樹立を実施している。マウス肺より採取した肺上皮細胞と肺線維芽細胞をマトリゲル内で3次元培養することで肺オルガノイドの作製に成功した。このオルガノイド内にはPDPN陽性のI型肺胞上皮細胞、SFTPC陽性のII型肺上皮細胞、CC10陽性のクララ細胞などの肺組織構成細胞が存在していることが確認された。今後、このオルガノイドに対して肺腺癌ドライバー変異導入などを行うことで、in vitro肺腺癌発癌モデルを樹立する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肺腺癌病理標本を用いたイメージング質量分析を実施したが、今回のサンプル処理、測定条件ではヒストン修飾及び他のタンパクを検出できなかった。ホルマリン固定パラフィン包埋標本は、凍結標本と異なり、ホルマリン固定によるメチレン架橋などが生じており、これがサンプルのイオン化を阻害していると推測される。その為、ホルマリン固定パラフィン包埋標本を用いたヒストン修飾のイメージング質量分析に適したサンプル準備条件の検討に時間がかかっており、研究実施に遅れが生じてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度前半は、肺腺癌組織亜型内のヒストン修飾パターンを明らかにする為に、昨年度のサンプル前処理に、賦活化処理によるメチレン架橋を解離やトリプシンによる酵素処理を追加することで、検出条件を最適化してイメージング質量分析を実施する。また、肺オルガノイドにドライバー変異などを導入することで、in vitro肺腺癌発癌モデルを作製し、組織亜型評価モデルを確立する。平成30年度後半は、同定したhigh grade亜型に特長的なヒストン修飾について、ChIP-Seqによる解析を用いてヒストン修飾が生じるゲノム領域や修飾酵素を特定する予定であり、同定したhigh grade亜型形成に関わる因子のin vitro、in vivoでの検証実験については、in vitro肺腺癌発癌モデルを用いて検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由: イメージング質量分析によるヒストン修飾が検出でき無かったため、計画当初よりもイメージング質量分析の実施回数が減少したこと、またChIP-Seq解析が出来なかったために使用額が予定より下回った。 使用計画: 質量イメージング解析、ChIP-Seq解析に予算を当てると共に、in vitro肺腺癌発癌モデルの樹立に必要な培地などの細胞培養用試薬、マウス購入費/維持費、プラスチック製品などの消耗品を物品費として使用する。また、研究成果発表の為の学会への参加費や旅費、論文発表の為の投稿料に使用する。
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