研究課題
最終年度では、まず肺小細胞癌細胞株及び浸潤性膵管癌細胞株における核内受容体(Liver X Receptor α/β : LXRα/β)の発現を検討し、これら難治性癌の細胞株においてもLXRα/βの発現がタンパクレベルで見られることを確認した。次に、これらの難治性癌細胞株に対するLXRインバースアゴニストの効果を検討した。LXRインバースアゴニストはこれまで多くの検討がなされてきたLXRアゴニストに比べて副作用が少ないにもかかわらず、大腸癌や前立腺癌細胞株等に対し強力な抗腫瘍効果を示すことが報告された比較的新しいLXR標的薬である。その結果、LXRインバースアゴニストは非生理的な非常に高濃度であればこれらの癌細胞に対して抗腫瘍効果を示すが、これまでに他の癌種において報告されている濃度では抗腫瘍効果は示さなかった。このように難治性癌に対するLXR標的薬の有用性は示すことはできなかったが、研究期間全体を通して考えれば、正常肺組織、正常膵臓組織、肺小細胞癌組織および浸潤性膵菅癌組織におけるLXRα/βの発現を免疫組織化学法にて検討し、正常肺及び膵組織の各種上皮細胞ではLXRαの発現がみられないのに対しLXRβは核に発現がみられること、肺小細胞癌及び浸潤性膵管癌組織においても癌細胞には高率にLXRβの発現が見られるのに対しLXRαの発現は見られないことを明らかにした。これらの結果は、今後のLXRを標的とした難治性癌治療の開発や、癌代謝に関する研究の一助になるものと考えられる。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Histology and Histopathology
巻: 33 ページ: 497-505
10.14670/HH-11-949