研究課題/領域番号 |
16K19085
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
加藤 生真 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80644939)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 骨腫瘍 / 骨巨細胞腫 / RANK / RANKL / 遺伝子変異 / 病理組織 / 免疫組織化学 |
研究実績の概要 |
RANK/RANKL系は破骨細胞分化誘導に関連することが知られており、骨リモデリングによる恒常性維持において重要な役割を担っている。本研究では、ヒト骨巨細胞腫の治療として抗RANKL阻害剤デノスマブが投与された後の特異な病理組織像に着目し、骨代謝シグナルネットワークの解明を試みた。 骨巨細胞腫と生検で診断され、デノスマブ治療後に掻把された9例をリストアップし、ホルマリン固定パラフィン包埋ブロックを収集した。組織像、免疫組織化学的染色による骨芽細胞マーカー(RUNX2)・破骨細胞マーカー(NFATc1)・最近明らかとなった遺伝子変異特異的マーカー(H3.3G34W)発現を治療前後で詳細に観察した。いずれの抗体も核陽性像を有意とした。また、サンガー法を用いて、腫瘍特異的な遺伝子変異(H3F3A)の有無を調べた。 デノスマブ治療により全例(9/9)で同様の変化がみられた。破骨型巨細胞の消失・破骨細胞マーカーNFATc1の陰性化が確認された。その一方で、骨芽細胞マーカーRUNX2および変異特異的マーカーH3.3G34Wの発現が一貫してみられ、サンガー法でも一貫して変異が確認された。 組織像の劇的な変化は腫瘍細胞の消失を意味しないことが明らかとなった。破骨細胞消失後も変異が検出されることから、破骨細胞は腫瘍細胞ではないことが確認された。非腫瘍性の破骨細胞が、骨代謝ネットワークを介して多数動員されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
変異特異的な免疫組織化学抗体が確立されたことにより、その抗体を用いた発展的検討をすすめることができた。サンガー法による遺伝子変異解析結果とあわせて、より正確なデータが収集できた。
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今後の研究の推進方策 |
症例数をさらに増やすとともに、デノスマブ治療期間短縮例に関して、治療効果の違いを検討する予定である。 また、変異特異的抗体陽性細胞の局在の詳細な観察を実施中であり、先行データを国際学会で発表した。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は遺伝子変異特異的な免疫組織化学マーカーが確立されたことにより、変異細胞の局在を比較的安価な免疫組織化学で代用することが可能となった。したがって予定より少ない支出であった。
次年度は骨代謝経路に関して、計画当初よりも多数の発現解析を実施する予定のため、本年度の繰り越し分が必要となる。
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