デノスマブ(ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤)が骨巨細胞腫の治療薬として用いられるようになったが、治療後の骨形成を含む劇的な病理組織像の変化の詳細はこれまでに解明されていなかった。近年発見された、骨巨細胞腫の特異的遺伝子異常と病理組織像を統合的に解析することで、腫瘍および骨代謝経路のメカニズムの一端を解明することを目指した。 デノスマブ治療前後の病理組織検体を比較して検討した。治療後の組織像では破骨型巨細胞の消失およびNFATc1(破骨細胞分化マーカー)の陰性化がみられた。一方、H3F3A変異は治療前後で一貫して検出され、免疫染色でもH3.3 G34W陽性細胞およびRUNX2陽性単核細胞が一貫して観察された。さらに蛍光免疫組織化学により、RUNX2とH3.3 G34Wの共発現・CD68とH3.3 G34Wの相互排他的発現を証明した。 従来から骨巨細胞腫の単核細胞には、①腫瘍性間質細胞(RUNX2やOsterixなどの骨芽細胞系マーカー性)と②単球系細胞(CD68陽性)の2種類が存在すると報告されていた。一方で、HE像から2種類の単核細胞を認識することはおよそ不可能であり、病理医にとっては納得しがたい説であったと言える。今回の研究により、腫瘍細胞の本体は上記の「①骨芽細胞系マーカーを発現する細胞」であることが、病理医にも納得できる形で確認され、長年続いていた議論に対する結論を示すことができたと考えられる。また、デノスマブ治療後にみられる骨は形を変えた腫瘍細胞が形成していることが示され、治療効果の評価には慎重を要することが示唆された。
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