研究実績の概要 |
当該研究室では、これまでに変異型KRAS 遺伝子を不死化気道上皮細胞に導入したin vitro 実験モデルのマイクロアレイ解析からがん遺伝子によって発現誘導された分子を抽出し、それら分子の肺癌における発生や進展に関わる機序を報告してきた。 不死化気道上皮細胞に変異型KRAS遺伝子および変異型EGFR遺伝子を導入することによって、共通に発現亢進のあった分子(CCL3, IL1B, IL-24, MMP1, MMP3)で、サイトカイン分子の中からIL-24に着目し研究をまとめた。不死化気道上皮細胞株に変異型KRAS遺伝子および変異型EGFR遺伝子を導入するとIL-24の発現上昇を認めた。肺腺癌や小細胞癌の肺がん細胞株では発現の低下や消失を認めた。幾つかの肺がん細胞株ではトリコスタチンやアザシチジン処理によりIL-24mRNA発現の上昇を認めた。A549細胞株やPC9細胞株にレトロウィルスを用いて遺伝子導入すると遊走能の有意な抑制を認めた。EGFPタグを用いた過剰発現では、IL-24は気道上皮細胞の細胞質に顆粒状に陽性となることを発見した。肺癌切除検体を用いたIL-24の発現解析では、浸潤パターン優位の肺腺癌で発現の有意な低下を認めた。また、進行期の肺腺癌で発現の有意な低下が見られた。これらの結果よりIL-24が肺腺癌においては、初期ではがん遺伝子により発現が誘導され浸潤を抑制し、後期では進行に伴って消失していく可能性が示唆された。 変異型KRAS遺伝子によって誘導される分子の中の解析で、CXCL7高発現の肺腺癌では予後が良い傾向にあった。
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