研究課題/領域番号 |
16K19086
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
梅田 茂明 横浜市立大学, 医学部, 助教 (30644439)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サイトカイン / 多重免疫染色 |
研究実績の概要 |
CXCL7およびCXCR2の発現について、ヒト肺癌切除検体を用いて免疫染色を行った。CXCL7は低分化な腺癌細胞で陽性を示していた。CXCR2については、炎症細胞での陽性を確認した。CXCL7については、高発現の肺腺癌症例群は低発現群と比較して、Relapse Free Survival(RFS)の評価で有意に予後が良好であることを発見した。これらの結果からCXCL7とCXCR2の発現が肺腺癌の生物学的特性に関与している可能性が示唆された。これまでのサイトカイン解析の中で生じた新たな問題として、サイトカインリガンド、サイトカインレセプターの発現を評価する上で、発現細胞の種類の同定とこれら分子の発現を同時に評価することが必要となった。旧来、多重免疫染色の方法としては、動物種を変えた酵素抗体法による染色や蛍光抗体を用いた染色があるが、いずれも染色種類の制限や自家蛍光の出現といった問題点があった。そこで、我が研究室では、水溶性のAEC発色剤を用いた免疫染色を行い、バーチャルスライドでスキャンし、アルコールによって染色を落とし、オートクレーブによる賦活化で抗体反応を停止させ、これらを繰り返すことで多種類の分子の発現評価をするという多重免疫染色方法を検討した。ヒト扁桃組織を用いた予備実験として、CD20, CD45RO, CKAE1/AE3染色を行った。バーチャルスライドとしては、二種類のメーカーの機器を検討した。AECによる発色は良好で、スキャンについても、自動フォーカスでもピントがあった状態で、10分前後の経過時間でスキャンができるようになった。画像解析は市販のソフトとフリーウェアのソフトの二種類を検討した。いずれのソフトを用いてもスキャンした画像の重ね合わせにより多分子の同時発現の評価が可能となることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度の予定について、研究計画ではヒト肺癌細胞株を用いたsiRNAノックダウンによる機能解析の予定であったが、ヒト肺癌臨床検体を用いた免疫染色で、CXCL7, CXCR2の発現の局在の複雑さから、新たな解析方法の開発が必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
CXCL7およびCXCR2の発現解析について、炎症細胞としてはTリンパ球、Bリンパ球、形質細胞、マクロファージの区別を行い、癌細胞としてはサイトケラチン、また、肺腺癌マーカーのTTF-1、HNF4αの評価を多重免疫染色を行って、同時に評価していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
免疫染色に用いた抗体や発色剤について既存のものを使用することで、出費を抑えることができた。次年度については、病理画像解析ソフトの購入に充てる予定。
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