研究課題/領域番号 |
16K19087
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
羅 奕 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30633797)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 胃過形成ポリープ / 早期胃癌 / BRAF / H. ピロリ菌 / cag A |
研究実績の概要 |
胃癌における早期遺伝子変化を検討するため、腺窩上皮過形成ポリープに発生する腺癌を検討した。22例の過形成ポリープのうち、高度異型性ないし乳頭管状腺癌が認められた5例では、いずれもH. pylori陰性・CDX2陰性で、8OHdG陽性核が著増しており、ピロリ関連発癌よりも酸化ストレス関連発癌が示唆された。さらに、高度異型および腺癌が認められた5症例では、すべての症例にBRAF codon 600(V:GTG to E:GAG)の点突然変異が認められた。 BRAF点突然変異は胃癌ではまれな変異であり、H. pylori陽性胃癌ではほとんど検出されない。このことからH. pyloriによる影響により発癌早期に存在するドライバー遺伝子に二次的な変化が生じる可能性を考えさらに検討を行った。 cdx2発現の影響を排除するため、BRAF:V600E突然変異を有するA375メラノーマ細胞に、H. pylori感染をシミュレートするためCagA遺伝子を導入した上で、38週間にわたり持続的にEGF処理を行った。この結果、処理株ではBRAF:V600Eが検出されたがCDX2発現の誘導が認められた。さらに、親株はBRAF阻害剤vemurafenibに対して感受性であったが、処理株では感受性が消失していた。これらの結果から、CagAの影響によりBRAF:V600Eを上回るドライバー遺伝子変化が新たに生じた可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りに実験を施行し、結果を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度では、胃発癌モデルを用いたドライバー遺伝子の生成に関する検討を、当初の計画に基づいて行う予定である。動物実験による発癌期間が長引く可能性もあり、in vitro transformationによる遺伝子変化も並行して検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定に組み込まれていたin vitro transformation assayの開始が遅れたため、発癌物質やEGFの投与、ノックアウト・ベクター作製・導入が平成29年度にずれ込んだため、予算執行が一部次年度しようとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のように、やや遅れて施行するin vitro transformation assayに必要な消耗品費として、次年度使用額を使用する予定である。また、当初の請求助成額は、当初の計画されていた実験計画の実施に使用する。
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