研究課題
これまでの研究成果で、胃癌間質のmiR-21やperiostinの過剰発現がリンパ節転移と相関する結果が得られている。また、miR-21は中皮間葉転換を介する播種微小環境形成に寄与する事を証明した。前年度までにエクソソーム内miR-21が中皮細胞株(Met5A)に対して中皮間葉転換を誘導することを確認していたが、これは初代培養リンパ管内皮細胞にも同様の作用を示し、E-cadherinの発現低下とαSMAの発現上昇が確認された。これによりリンパ節辺縁洞に癌細胞が到達する前段階のpre-metastatic nicheにおいて、miR-21がリンパ管内皮に作用し、体腔播種と同様の現象を誘導している可能性が示唆された。胃癌リンパ節転移初期段階では、辺縁洞に癌細胞が充満する現象が確認される。免疫組織化学的には、癌細胞が辺縁洞に到達する時点からリンパ節内のリンパ管新生がさらに促進することが確認されたので、免疫組織化学的手法およびin situ hybridization法での発現を検討したところ、辺縁洞に癌細胞が存在するリンパ節被膜の線維性組織内にperiostinのタンパク発現および同部の線維芽細胞にperiostinのmRNAを認めた。以上の結果から、癌細胞が辺縁洞に到達した時点では、リンパ節被膜からもperiostinの発現が誘導され、リンパ節内のリンパ管新生に作用している可能性が考えられた。Periostinを過剰に発現するマウス線維芽細胞株(NIH3T3)を作製し、この培養上清をリンパ管内皮細胞に作用させて増殖能を評価したところ、リンパ管内皮細胞の増殖亢進が確認された。これまでの研究成果より、原発巣癌間質およびリンパ節辺縁洞周囲のリンパ節被膜間質組織で発現する因子が、リンパ節転移におけるper-metastatic nicheの形成に寄与している可能性が示された。
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Cancer Medicine
巻: 9 ページ: 2879~2890
10.1002/cam4.2928