研究課題/領域番号 |
16K19091
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 秀明 愛知医科大学, 医学部, 助教 (90711276)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 膵臓癌 / 浸潤突起 / ソニックヘッジホッグ / 細胞骨格 |
研究実績の概要 |
膵臓癌をはじめとする多くの癌細胞では浸潤突起 (invadopodia)と呼ばれる構造体を形成し細胞外マトリックスを破壊し浸潤すると考えられている。しかし浸潤突起の形成機構は大部分が明らかなっていない。申請者は膵臓癌で発現が上昇しているヘッジホッグ関連因子であるSTIL(SIL, SCL/TAL1 interrupting locus)に対する特異的siRNAにより浸潤突起が消失するという予備的知見を得ており、本課題では浸潤突起形成におけるSTILの分子機能について分子細胞生物学及び病理組織学的手法によりに解明し、もってSTILを介した膵臓癌浸潤機構の解明ならびに膵臓癌新規治療標的開発への基盤的知見を得ることを目的とし研究を行っている。 本年度は、STILノックダウン膵臓癌培養細胞を用い、浸潤突起連因子の細胞内における時空間的変化、および浸潤突起の軸となる細胞骨格の形成との関連を解析するとともに、免疫沈降法によるSTILと浸潤突起形成因子の結合性の検討、膵臓癌外科病理手術検体におけるin situでのSTILと浸潤突起関連因子の結合の検討を引き続き行った。 浸潤突起形成過程を時空間的に解析した結果、STILノックダウン細胞では細胞底部のアクチン骨格構造形成が乏しく、浸潤突起形成部においてアクチン骨格構造の形成が認められなかった。このアクチン骨格形成は浸潤突起形成の初期段階に起こると考えられたため、浸潤突起形成初期の細胞底面の細胞骨格形成に関連する因子にも検索の幅を広げ、STILとの関連について検討を行った。その結果、それまでSTILと関連があると考えられた浸潤突起関連因子であるcortactinやfascin1に加え、Focal adhesion kinase(FAK)をはじめとする細胞骨格関連因子も関連が示唆されたため、今後STILとの関連を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度、浸潤突起の形成過程と浸潤突起関連因子の局在や細胞骨格の形成について解析を行った中で、STILノックダウン細胞では浸潤突起が形成される細胞底面においてもアクチンによる細胞骨格形成が乏しく、浸潤突起の軸となるアクチン骨格形成を認めなかった。そのため当初STILが関与すると予想された浸潤突起形成段階より初期の段階においてSTILが浸潤突起形成に関与している可能性が生じた。そのため、STILノックダウン細胞で蛍光免疫染色等を行い、候補となる因子を検索したが、そのために多くの時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、浸潤突起形成時に浸潤突起関連因子であるfascin1およびcortactinとSTILについて、細胞内局在やそれらの相互作用について経時的に固定した細胞に蛍光免疫染色や細胞骨格染色、proximity ligation assay(PLA法)を施行し解析を行う予定としている。さらにこれらに加えFAK等細胞底面での細胞骨格形成にかかわる因子についても、同様の解析を行うことを予定している。また、これら因子とSTILの免疫沈降法による結合解析を予定している。 さらに、細胞骨格や浸潤突起関連因子とSTILを生細胞でイメージングできるシステムを構築し、生細胞での浸潤突起形成解析を予定している。 外科病理検体では、FAKを含めた浸潤突起関連因子・細胞骨格関連因子とSTILの共局在解析をPLA法等を用いin situで行う予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部実験に遅れが生じ計画を変更したため、本年予定した実験を完遂することができず、次年度への繰越金が生じた。 (使用計画) 本年予定していた実験の一部も次年度併せて行う予定としており、それに伴い繰り越した助成金も使用する予定にしている。
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