研究実績の概要 |
膵臓癌をはじめとする多くの癌細胞では、浸潤突起 (invadopodia)と呼ばれる構造体を形成し細胞外マトリックスを破壊し浸潤すると考えられている。しかし、 浸潤突起の形成機構は大部分が明らかになっていない。申請者は膵臓癌で発現が上昇しているヘッジホッグ関連因子であるSTIL(SIL, SCL/TAL1 interrupting locus)に対する特異的siRNAにより浸潤突起が消失するという予備的知見を得ており、本課題では浸潤突起形成におけるSTILの分子機能について分子細胞生物学的及び病理組織学的手法により解明し、以てSTILを介した膵臓癌浸潤機構の解明ならびに膵臓癌新規治療標的の基盤的知見の確立を目指している。 これまでの浸潤突起形成過程におけるSTIL局在の経時的解析により、STILは浸潤突起の形成初期に起こるとされる骨格形成に関連するCortactinと共局在しており、Cortactinのリン酸化に関与していることを見出している。さらに、STILはARHGEF7と結合能を有しており、ARHGEF7を介して浸潤突起におけるMT1-MMPの局在制御を行い、細胞外マトリックス分解酵素群の分泌制御に関与している可能性があることを見出している。これらについては、より詳細なメカニズムの検討を今後も続ける予定としている。 また、病理組織上でのSTILとCortactinの発現・共局在について、免疫組織染色およびproximity ligation assay(PLA)法を用い、今後も症例を増やして検討を継続していく予定である。STIL-ARHGEF7に関してはPLA法の条件検討を引き続き行いたいと考えている。
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